中国ハッカー、有事で米アジア間の通信回路遮断する能力狙う 米MSが報告
(CNN) 米マイクロソフトは6月1日までに、中国政府が後押しするハッカー集団が米中間の将来の有事発生に備え、米国とインド太平洋地域を結ぶ重要な通信回路などに障害を及ぼすサイバー能力の構築を狙っている可能性があるとの新たな報告書を公表した。
この種の活動は2021年半ばから活発化し、非公然なスパイ活動や情報収集活動の一環として米領グアム島や米国の他地域で重要なインフラ施設を標的にしていると指摘。これらの施設には海運、輸送、通信、公益事業や政府部門などが含まれているとした。
CNNはマイクロソフトに今回の主張を裏づける特定の情報提供を求めたが、同社はブログ上での公表分以上に立ち入ることは拒んだ。
米政府当局者は米国を狙う政府ぐるみのハッカー行為で、最も執拗(しつよう)かつ多産なのは中国と常に位置づけてきた。米国土安全保障省傘下のサイバー・インフラ安全局(CISA)のイースタリー長官は今年2月、中国のハッカーたちは非常に頻繁に「正体不明の形で阻止されることなく」米機関内に侵入していると警告もしていた。
米国防総省高官は今年3月、台湾有事に絡めた中国のハッカーたちの活動にも言及。台湾に侵攻した場合、電力供給などの公共サービスを遮断し得る台湾の重要インフラに足がかりを確保したとの懸念も示していた。
この高官は中国のハッカーたちの動きをロシアが以前ウクライナで見せたサイバー戦術と比べながらも説明。米司法省などの分析によると、ロシア軍に関係するハッカーたちは15年と16年にウクライナで電力供給を2度にわたって停止させてもいた。
在ワシントンの中国大使館はマイクロソフト社の報告書に反発。コメントの求めに応じ、大使館の報道担当者は中国政府がハッキング活動を支えているとの米側の主張は事実の完全なねじ曲げと切り捨てもした。
同社の今回の報告書の内容やこれに伴う中国側の反駁(はんぱく)は太平洋地域における現段階や将来での米中間の権力をめぐるしのぎ合いや領土紛争でサイバー空間での活動が大きな意味合いを持つことも明示している。中国は領有権論争が長引く南シナ海で近年、環礁などを軍事基地化する威圧的な行動を見せており、米政府当局者は拡張主義との警戒心を募らせている。