23日、マスク氏は投稿の中で今回の措置をこのように説明している。「ツイッターの名称は、鳥のさえずりのように140文字以内でメッセージをやり取りしていたからこそ意味があった。だが今では数時間分の動画など、ほぼ何でも投稿できる」
「今後数カ月のうちに総合通信サービスと、あらゆる金融業務の機能を追加する」とマスク氏。「そうなった暁には、ツイッターという名称はもはや意味を成さない」
(今回のブランド刷新は、「X」という文字へのこだわりの一環でもあるようだ。テスラにも「モデルX」という車種があり、マスク氏のロケット開発企業は「スペースX」、新たに立ち上げたAI開発会社も「xAI」。またマスク氏の2人の子どもはそれぞれ「X Æ A-Xii(エックス・アッシュ・エー・トゥエルブ)」「Exa Dark Sideræl(エクサ・ダーク・サイディリール)」と名付けられている)
ここ数週間、ツイッターは密かに決済業務「ツイッターペイメント」の追加に向けた準備を進めており、アリゾナ州とミシガン州を含む全米4州で送金事業者の認可をすでに受けている。マスク氏は以前から、ツイッターで長尺動画サービスを推し進めたいと口にしていた。さらにツイッターのビジネスモデルを広告収入から、認証マークの有料化に転換しようとも試みたが、結局は混乱を招いただけで、実際に認証マークを購入した人はわずかだった。
それだけでなく、ツイッターをフル装備のスーパーアプリに変身させるにあたり、マスク氏の目の前には難問が待ち構えている。ツイッターを買収して以来、マスク氏は従業員の約80%近くを解雇した。同社のコアユーザーだった広告主は、恐れをなしてツイッターから撤退した。ユーザーの多くも、物議を醸す経営方針に不満を募らせた。そこへきて今度はメタ社が競合アプリ「スレッズ」を立ち上げ、ここ数日は利用率が先細りしているものの目覚ましいスタートを切り、ツイッターは激しい競争にさらされている。
マスク氏本人も先週、ツイッターの広告収入が半減したためにキャッシュフローがマイナスであることを明らかにした。
仮にマスク氏がツイッターに新機能を追加したとしても、多くの米ITプラットフォームはウィーチャットのような成果をなかなかあげられずにいる。コンサルティング会社デロイト社が昨年発表した報告書によると、欧米市場で「ウィーチャットのような単一独占型スーパーアプリが近い将来」お目見えする可能性は低いという。その理由は、そうしたアプリが一元化を図るデジタル決済や配車などのサービスは、すでに「あまりにも多くの、十分名の知れた企業が提供している」からだ。
19年、当時のフェイスブックは独自のデジタル通貨と決済システムを創設しようと試みた。これによりオンライン購入が簡略化されると考えていたが、厳しい法規制審査に遭い、昨年正式に打ち切られた。ティックトックとインスタグラムもオンラインショッピング機能の統合を図ったが、ユーザーから大きな反響が得られず、計画を縮小化したと報じられる。
マスク氏がツイッターの大改革に乗り出さない限り、すでに定着化したツイッターのブランドを捨てるのは危険だというのが大方の意見だ。
とりわけメタ社がスレッズを立ち上げた後では、「大した新機能がない状態でブランド刷新を図るのは、なんとか関心を集めたいという悪あがきに見える」と、バンダービルト大学で金融を教えるジョシュア・ホワイト助教は言う。「コカ・コーラを買収して、材料の配合を変えずにボトルと名称を変えるようなもの――判断ミスと言っていいだろう」
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本稿はCNNのクレア・ダフィー記者による分析記事です。