ニューヨーク(CNN) 米ネットフリックスはパスワード共有の取り締まりや、より安価な広告付きプランの導入を通じて数百万人の追加加入者を獲得してきたが、その成長の勢いが終わりに近づいていることを知っている。同社は投資家たちが会員数にこだわるのをやめ、他の指標に注目することを望んでいる。
ネットフリックスは先ごろ発表した四半期決算報告の際、株主に向け「収益も利益もほとんどなかった初期のころ、会員数の伸びは将来の可能性を示す強力な指標だった。しかし今では非常に大きな利益とフリーキャッシュフローを生み出している。広告やゲストメンバー機能のような新たな収益源も開発しており、会員数は当社の成長の一要素に過ぎない」と説明。同社は2025年から四半期ごとの加入者数の報告は行わないと述べた。
指標の公開を取りやめるという決定は、ストリーミング革命における重要な転換点を意味する。ネットフリックスは長年、極めて透明性の高いサービスであることを自負してきた。同社がこの分野の中心的なプレーヤーであることを考えると、他のメディア企業も同社の動きに触発され、こうしたデータの報告をやめることを選ぶと予想できるかもしれない。
ネットフリックスの考えが的外れというわけではない。同社がビジネスモデルをサブスクリプション(定額制)から広告やその他の収益源に移行していく中で、利用者がサービスに費やす時間を重視することは理にかなっている。利用者がネットフリックスで消費するコンテンツが多ければ多いほどサービスに対する支払いを継続する可能性が高くなり、同社がひとりの加入者から得る収益は増えていく。特にその加入者が広告付き視聴プランの対象なら。
ネットフリックスは株主への書簡の中で「我々は収益と営業利益を主要な財務指標とし、エンゲージメント(滞在時間)を顧客満足度の最良の指標として重視している」と強調している。
とはいえ、すでに不透明な業界においてさらに透明性が失われていくことは理想的ではない。ストリーミング業界には、米調査会社ニールセンがリニアテレビ放送局について収集しているような詳細な視聴者データがすでに欠けている。ストリーミング業界の可視性は今後低下していくだろう。ネットフリックスは「主要な加入者のマイルストーン(節目)を超えたら発表する」と述べているが、これは非常に漠然とした発言であり、同社が何をマイルストーンと定義しているのかは不明だ。
ネットフリックスの今回の発表は、輝かしい四半期業績に影を落とすことになった。第1四半期に加入者数は930万人増加し、全世界の加入者数は約2億7000万人に達した。利益と収益はいずれもアナリストの予想を上回った。
一方で同社は第2四半期の加入者数の伸びが「通常の季節要因」により鈍化すると予想。株価は時間外取引で5%近く下落した。
「通常の季節要因」のみが原因なのか、単にストリーミングサービスが頭打ちになりつつあるのかは不明だ。おそらくその両方が混在しているのだろう。原因が何であれ、今後の見通しによって株価が下落していることは、ネットフリックスがウォール街に対し加入者数に注目するのをやめるよう望んでいる理由をよく示している。そして、1年後、投資家に選択の余地はなくなるだろう。
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本稿はCNNのオリバー・ダーシー記者による分析記事です。