米アップル、AIの新機能を発表 iPhoneに生成AI採用
米カリフォルニア州クパチーノ(CNN) アップルは10日、年次開発者向け会議「WWDC」を開催し、人工知能(AI)技術を使った新機能「アップルインテリジェンス」を搭載した一連のツールを初披露した。これにはパーソナライズされた「Genmoji(アップルのAIが生成する絵文字)」や、大幅に賢くなった「Siri(シリ)」などが含まれる。Siriはスケジュールやメールの内容、愛する人の飛行機の到着時刻に関する質問に答えられるようになった。
同社はこれらの機能を強化するために対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」の開発元であるオープンAIとの提携も発表した。
アップルは発表の中で、プライバシーとセキュリティーの観点から大半のAI機能はデバイス上で実行されることを強調。すでに市場に出回っている生成AIツールは素晴らしいとしつつも、プライバシーを念頭に置いてよりパーソナルなものにしたいとしている。
「アップルインテリジェンス」によって絵文字のパーソナライズも/From Apple
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は基調講演で生成AIについて「直感的で使いやすくなければならない。製品体験に深く組み込まれていなければならない」「最も重要なのは、ユーザーを理解し、ユーザーの日常生活、人間関係、コミュニケーションなど、ユーザーの個人的な状況に根ざしている必要がある。そしてもちろん、最初からプライバシーを考慮して構築されている必要がある」と語った。
「ChatGPT(チャットGPT)」の開発元であるオープンAIとの提携も発表した/From Apple
AI、AI、さらにAI
アップルは生成AIを同社の仮想アシスタントであるSiriを通じて採用することで、SiriをiPhoneのチャットボットに変えている。
生成AIにより、Siriは、iPhoneで何年も前に撮影した写真を検索したり、天気、ニュース、雑学に関する詳細な質問に答えたりできるようになる。以前にメールで送られた情報を分析することで、ユーザーの母親の飛行機が到着する時間を回答するなど、より高度なタスクの実行も可能だ。徐々にユーザーの好みを学習し、それに応じた回答もできるようになるという。
生成AIにより「Siri(シリ)」の機能も強化される/From Apple
母親の写真にスーパーヒーローのマントを追加して漫画風のスタイルにするといったパーソナライズされた写真を作成することもできる。家族写真をすべて表示するようアプリ間でアクションを実行したり、メールやカレンダーなど画面に表示されているものを考慮するなど、アプリ全体からデータを取得して分析したりすることも可能だ。
会議の予定が変更される場合は、アップルインテリジェンスが関連するデータを処理して、子どもが数日前に送ってきた発表会についてのメールを確認。予定が重なる可能性があればユーザーに教えてくれる。
AIを超えて
アップルは「iOS18」で導入される新しいコントロールとパーソナライゼーション機能を強調した。これには、ダークモードにしたときのすべてのアイコンの外観の刷新、壁紙を引き立てる新しい淡彩、ロック画面から利用できる再設計されたコントロールセンターなどが含まれる。
特定のアプリを「ロック」して、フェースID、タッチID、またはユーザーのパスコードでのみアクセスできるようにすることも可能になる。
アプリを「非表示」にすることもできるようになった。非表示のアプリに保存されたメディアはiPhoneの他の場所には表示されない。
テキストメッセージも強化された。ユーザーは間もなくセルラー通信やWiFi接続がなくても、衛星経由でテキストを送信できるようになる。iMessageで最も要望の多かった機能の一つである、メッセージの予約送信スケジュール機能も追加されるという。
ユーザーは電話アプリから直接通話を録音して文字起こしを作成できる。通話を録音するときは、通話の参加者全員に通知される。
その他の製品アップデート
Mac(マック)、AirPods、アップルウォッチなどの製品にもソフトウェアアップデートが施された。
アップルは、いくつかの生産性向上機能を新たに搭載した最新のMacOS「Sequoia」を披露。例えば、電話ミラーリング機能は、iPhoneの通知をMacに直接表示し、Macの通知のすぐ横に表示する。
画面上で開いているウィンドウを横並びにするなど、特定の領域に配置する機能にも対応する。これはマイクロソフトのウィンドウズで普及した概念だ。
ビデオ会議には発表者プレビュー機能が搭載。発表者は参加者に共有する前に何を共有するかを確認できる。会議中の背景の変更機能も導入されたため、参加者は背後の洗濯物を隠すことができる。
AirPodsでは、うなずいたり首を振ったりするだけで電話に出たり拒否したりできるようになる。アップルウォッチは、体温や心拍数などの信号に基づいてユーザーの体調が悪くなりそうなときに教えてくれる。
アップル・ビジョン・プロのアップデート
「VisionOS2」は、作業用に大型化した画面、バッテリー残量を確認したりホーム画面を開いたりできる新しい手ぶりなどの機能が充実する。より自然な奥行きを実現する高度な機械学習によりライブラリーの写真は深みが増すという。
年次開発者向け会議「WWDC」が本社のある米カリフォルニア州クパチーノで開催された/Carlos Barria/Reuters
ユーザーが空間ビデオを撮影する機能も追加される。
アップルは今夏、ビジョン・プロを英国、中国、日本、シンガポール、オーストラリアなどで展開する見通し。