アイルランドの密造酒「ポチーン」、生産者の知られざる歴史 規制に抗い「独立国」宣言も

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アイルランド北部に存在した密造酒の「共和国」へと続く狭い道「マモレーギャップ」/mtnmichelle/iStockphoto/Getty Images

アイルランド北部に存在した密造酒の「共和国」へと続く狭い道「マモレーギャップ」/mtnmichelle/iStockphoto/Getty Images

(CNN) アイルランド最北端に位置するドニゴール県には、壮大な海岸の崖や険しい山々、人けのないビーチがある。

このドニゴール県は、19世紀にポチーン(アイルランドの密造酒)の違法取引の中心地だった。特に県の最北端に位置するアイルランド最大の半島、イニショウエン半島は、ポチーン関連の違法な活動が盛んだったことから、同半島内にあるウリス渓谷の名前を取って「ウリス・ポチーン共和国」と呼ばれた。

ポチーンは、穀物やジャガイモを原料に、田舎の家庭の蒸留窯で作られた蒸留酒だ。アイルランドと強い酒と聞いて真っ先に思い浮かぶのはウイスキーだが、ポチーンの歴史はアイルランド産ウイスキーよりもはるかに長く、その起源は1世紀までさかのぼるという説もある。

17世紀、アイルランドがまだ英国の支配下にあった時、当局はポチーンの製造を規制し、ポチーンに課税しようとしたが、それまで何世紀にもわたり自由に醸造してきた田舎の生産者から税金を徴収するのは容易ではなかった。その結果、ポチーンは1661年に非合法化された。

しかし、その後もポチーンの醸造はなくならず、地下に潜り、闇市場が栄えた。

今日、アイルランド北西部でよく語られるのが、スライゴ州の海岸沖にあるイニッシュムーリー島の話だ。マーチン・ヘガティという人物がこの島を王国と宣言し、非合法の蒸留所に変えた。

しかし、ヘガティは狡猾(こうかつ)で、簡単には捕まらなかった。またヘガティとその仲間は、主に夜の闇に紛れて活動していたため、現行犯で逮捕するのはさらに困難だった。そのため、彼らが住むコミュニティー全体が標的となった。

短命の「共和国」

「当局は、税金を回収し、違法な蒸留を根絶する方法を考え出す必要があった」と語るのは、アイルランドの祖先や歴史に興味を持つ人向けのサービスを提供するアイリッシュ・アンセストラル・ツアーズ・アンド・リサーチの創業者、ジェニファー・マクローリン・ドハティ氏だ。同氏はウリスで育ち、短命に終わったウリス・ポチーン共和国の時代とも密接なつながりがある。

マクローリン・ドハティ氏によると、当局は個人に罰金を科すのをあきらめ、町全体に罰金を科すことにしたが、それも効果がなかったため、地主から取り締まりにかかる費用を徴収し始めたという。

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