モバイルバッテリーの機内持ち込み、禁止する航空会社が増加 その理由は?

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旅行者は充電目的でリチウムイオン電池搭載のモバイルバッテリーを携行することが多い/O_Lypa/iStockphoto/Getty Images

旅行者は充電目的でリチウムイオン電池搭載のモバイルバッテリーを携行することが多い/O_Lypa/iStockphoto/Getty Images

(CNN) アジアの複数の航空会社が、リチウムバッテリーの機内持ち込みに関する規定を厳格化している。機内で相次ぐ過熱や発火事故を受けた措置だ。

韓国国土交通省は声明で、離陸待機中だったエアプサンの旅客機で1月に発生した火災について、調査委員会や法科学組織の話として、リチウム電池を搭載したモバイルバッテリーが出火原因となった可能性があるとの見方を示した。

声明によると、調査員は「モバイルバッテリーの残骸から複数の電気溶融痕を確認した」という。

旅行者はスマートフォンやタブレット、ノートパソコン、カメラを移動中に充電する目的で、リチウムイオン電池を搭載したモバイルバッテリーを携行することが多い。こうした機器はポケットに収まるサイズで、長距離のフライト中にゲームをしたり、ダウンロードした映画を視聴したりするため端末に給電できる。

しかし製造元の問題や誤用、経年劣化の影響で、可燃性物質を使うこうしたバッテリーのリスクは増大。機内で火災が発生する可能性も浮上している。米連邦航空局(FAA)は過去20年の間に、煙や火災、高熱を伴うリチウム電池の機内事故を500件以上記録した。

今年1月、韓国エアプサンの旅客機でモバイルバッテリーが原因とみられる火災が発生/joo/Yonhap/AP
今年1月、韓国エアプサンの旅客機でモバイルバッテリーが原因とみられる火災が発生/joo/Yonhap/AP

規定を変更した航空会社は?

韓国は今月から全国的な規制を施行しており、国内の全航空会社を対象に、モバイルバッテリーや電子たばこを頭上の手荷物収納棚に保管することを禁止している。乗客はシートポケットや座席の下にモバイルバッテリーを収納できる。

一連の新規則によれば、モバイルバッテリーを座席のUSBポートに差し込んで、機内で充電する行為も禁じられる。

タイ国際航空は、乗客による機内でのモバイルバッテリーの使用と充電を15日から禁止すると発表した。「モバイルバッテリー使用との関連が疑われる国際線機内での火災事故」を受けた措置。

シンガポール航空は4月から、乗客がモバイルバッテリーを使って機内でスマートフォンや個人の端末を充電する行為を禁止する。機内のUSBポートでモバイルバッテリーを充電することも認めない。

格安航空会社エアアジアは、座席の下かシートポケットにモバイルバッテリーを収納するよう求め、フライト中の携帯電子機器の充電を禁止する方針を明らかにした。

台湾の大手航空会社エバー航空や中華航空、ユニー航空も、機内での携帯用充電器の使用を禁じる対応を取っている。

豪ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)大学STEMカレッジのクリスタル・チャン准教授によると、リチウムイオン電池はエネルギー密度の高さや比較的低いコストから、モバイルバッテリーに利用されることが多い。かさばらずに大量の電力を蓄えられるため、大容量モバイルバッテリーの選択肢として一般的だ。

チャン氏はCNNに対し、ビジネス旅行者や携帯端末に頼るすべての人にとって、長距離フライト中にモバイルバッテリーは欠かせないと指摘した。大半の空港では十分な充電ステーションが整備されていないためだ。機内での使用を一律に禁止すれば、乗客にとって大きな不便になるとの見方も示した。

リチウムイオン電池の問題点

スマートフォンやノートパソコン、ドローン(無人機)、スマートウェアラブル機器、電動スクーター、電気自動車(EV)はいずれも、リチウムイオン電池で動く。これらの電池は「熱暴走」と呼ばれる現象で過熱し、連鎖反応により火災や大規模な爆発につながる恐れがある。

豪ニューサウスウェールズ大学(UNSW)のソニア・ブラウン上級講師(航空宇宙設計)によると、モバイルバッテリーに使用されるリチウムイオン電池には、反応しやすく可燃性の高い物質が詰め込まれているという。

「リチウム電池自体が出火源となり得るほか、別の場所で発生した火災の燃料源になる場合もある。リチウム電池に損傷や膨張、製造上の欠陥がある場合、あるいは過充電や過熱が起きている場合は、出火源としてのリスクがさらに高まる」(ブラウン氏)

ブラウン氏は乗客に対し、モバイルバッテリーに膨張や外部損傷などの兆候がないか旅行前に確認し、何か異常な様子があった場合、地元の規則に従って廃棄を検討するよう推奨している。

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