大型貨物帆船で行く大西洋横断の旅、ターゲットは環境意識の高い旅行者
(CNN) 世界最大の貨物帆船とされる「アルテミス号」が、フランス北部に位置するルアーブル港を出港し、32日間の航海を経て、1月27日午後にニューヨークに到着した。
同船からは、フランス産のリキュールやシャンパン、ビルブレカンの水着、ボンヌ・ママンのジャムなど、約1000トンの荷物が降ろされ、さらに4人の乗客が下船した。
この4人は、フランスのスタートアップ企業トランスオーシアニック・ウインド・トランスポート(TOWT)が行ったアルテミス号の試験航海の一環として乗船していた。TOWTは最近、昨年就航した同社の貨物船団の船室を、より環境にやさしい大西洋横断の手段を求める一般客に開放し始めた。
高さ52メートルのカーボン製マストと、総面積2100平方メートルという桁外れに大きな帆を備えるこれらの船は、平均時速約20キロで航行し、風向きが良ければ最大時速約31キロに達することもある。これに対し、エンジンを搭載したコンテナ船の平均航行速度は時速約26キロだ。
TOWTの船は、入港時に使用する予備のディーゼルエンジンを搭載しているが、化石燃料を使用する貨物船と比較して、二酸化炭素(CO2)排出量を90%以上削減できると同社は推定している。
また航空機と比べてもCO2排出量ははるかに少ない。
「我々の船のカーボンフットプリント(温室効果ガスの排出量をCO2に換算したもの)は、1人当たり5~10キロ程度だが、飛行機で(パリからニューヨークまで)移動すると、およそ1トンのCO2が排出される」と、TOWTの最高経営責任者(CEO)、ギヨーム・ルグラン氏は述べた。
気候変動を理由に飛行機を利用しない人が増える中、ルグラン氏は低炭素旅行(CO2排出量の少ない交通手段を使う旅行)への需要が高まっていることに気付いた。陸路では鉄道が飛行機の代替手段として人気だが、ルグラン氏は、大西洋横断ルートの市場に「隙間」を見いだした。
TOWTが運航する各船には、最大六つのダブルキャビンが用意され、乗客は約7人の乗組員と共に航海する。また何百ものパレットに積まれた貨物は船倉に収納される。
TOWTは、「アネモス号」と「アルテミス号」という2隻の船を使用し、フランス、米国、コロンビア、ブラジル、そしてカリブ海のグアドループ島を結ぶ定期運航を3月から開始する計画だ。
さらに同社は、現在、新たに6隻の船を建造中で、2027年までに毎週の定期便の運航を開始したい考えだ。
クルーズ船にはあらず
しかし、この船の主な目的は貨物をA地点からB地点へ運ぶことにある。
ルグラン氏は「これはあくまで航海だ」と述べ、さらに「クルーズ船に乗るわけではない」と付け加えた。