大型貨物帆船で行く大西洋横断の旅、ターゲットは環境意識の高い旅行者
キャビンはシンプルで、パネル張りの部屋に二段ベッドかツインベッド、机、クローゼット、ポートホール(舷窓)が備えられている。
共用スペースにはフランスの古典文学などがぎっしり詰まった本棚があるだけで、それ以外の娯楽はほとんどないが、デッキでヨガをしたり、時折、乗組員が船で使われるロープの結び方や天文航法に関するワークショップを開催してくれる。
しかし、乗客はリラックスできる。読書をしたり、日記を書いたり、デッキから海洋生物を観察したり、乗組員と知り合いになることも可能だ。またルグラン氏によると、新鮮な魚などの食事を楽しんだり、高速のブロードバンドも利用できるという。「船上で仕事をすることも可能だ」とルグラン氏は付け加えた。
現在の料金は、フランスからニューヨークへの旅が2550ユーロ(約40万円)で、1日あたり約150ユーロ(約2万4000円)だが、TOWTはサービスを調整した上で、1日あたり約200ユーロ(約3万1500円)に値上げする見込みだ。料金には宿泊費、食事、インターネット接続が含まれている。手荷物に制限はなく、これは飛行機の旅行にはない利点だ。
しかし、この船の乗客には時間と柔軟性が求められる。フランスからニューヨークまでの航海は通常15~20日かかる。またブラジルやグアドループ島への旅は最大で25日かかることもあり、出発日や到着日は天候次第で変更される場合がある。
実際、乗客を乗せたアルテミス号の初航海は、悪天候により航路の変更を余儀なくされ、コンテナ船であれば平均約18日間でニューヨークに到着するが、アルテミス号は32日間を要した。

「アネモス号」から貨物が降ろされる様子/TOWT