過激派テロリストから大学の研究者に ある米国人男性の軌跡
モートン氏は、米国のテレビ番組がイスラム教の預言者ムハンマドを侮辱したとして制作担当者らを脅迫した疑いで、モロッコ滞在中に逮捕され、身柄を米国に引き渡された。そして12年には禁錮11年余りの刑を言い渡される。
独房に入れられたモートン氏は、それまでの自分の行動をじっくりと振り返った。図書館でルソーやロック、ペインらの哲学書を読み、「欧米の文化と文明に改めて共感した」という。
さらに、当時出会ったFBIの女性捜査官がモートン氏の人生を変えた。ほかの当局者たちのように悪者扱いせず、敬意と誠意を持って接してくれた彼女に、同氏は心を開いた。「米国政府は悪だ」と思い込んでいた固定観念も変化した。
モートン氏の刑期は3年足らずまで短縮され、昨年2月には釈放された。この1年間は「有名な事件」をめぐってFBIに協力していたというが、具体的な内容は明かさない。
今後は学内や米国市民の信頼を得るために努力しなければならないと、同氏は語る。「これは私にとって、過去の間違いを正すチャンスだ」と力を込める。
一方で今も強い罪悪感に苦しんでいると話し、「彼らが起こした事件を見て、私もかつてあの思想に共感し、賛同していたのだと思うと気分が悪くなる」とつぶやいた。