米連邦選挙委、クリントン陣営と民主党全国委に制裁金 「ロシア疑惑」の調査文書巡り
ワシントン(CNN) 米連邦選挙委員会(FEC)は31日までに、ヒラリー・クリントン元国務長官の2016年大統領選の選挙陣営並びに民主党全国委員会(DNC)に対して制裁金を科した。対立候補への調査に充てた資金を適切に公開しなかったためとしている。議論の的となっている当該の調査は、トランプ前大統領とロシアとの関係にまつわる疑惑の文書の作成につながったとされる。
FECは今月初め、DNCに10万5000ドル(約1280万円)、クリントン陣営に8000ドルの制裁金をそれぞれ科した。調査を依頼した保守系団体に送付した書簡で明らかになった。
政治家の候補者と団体は支出をFECに公開することが義務付けられており、200ドルを超える支出については逐一使途を説明しなくてはならない。今回FECは、クリントン陣営とDNCが上記の文書作成のための資金について誤った報告をしたと結論付けた。
具体的には「法律業務」と「法律および法令順守のコンサルティング業務」費用とされており、対立候補の調査に充てたとの説明はなかった。
当該の文書は英国の元スパイ、クリストファー・スティール氏がまとめたもので、トランプ氏に関する立証されていない主張を含む。具体的には同氏の陣営が16年大統領選に勝利するためにロシア政府と共謀したといった主張だ。当時トランプ氏の陣営はロシアの政府関係者と何度も接触し、同国の支援を受け入れていたが、ロシアと共謀したとして正式に訴追された人物は1人もいない。
「スティール文書」をめぐる資金の動きは、過去数年にわたり政界による精査の対象となってきた。100万ドルを超える資金がクリントン陣営とDNCから法律事務所パーキンス・クイに流れ、同事務所は調査会社フュージョンGPSに対立候補の調査を依頼した。この後フュージョンはスティール氏を雇い、国外の人脈を駆使してトランプ氏とロシアの関係にまつわるスキャンダルを見つけ出すよう依頼した。
スティール氏は自身の調査について、裏が取れておらずさらに調べる必要があると主張しており、公にする意図もなかったと述べていた。ところが17年1月、トランプ氏が大統領に就任する数週間前にスティール氏本人が作成したメモの内容が流出。その後の調査と訴訟によって、共謀に関する同氏の中心的な主張の多くは信用に足らないものだとされ、情報源も信頼性に欠けることが暴露された。
制裁金を通知する書簡の中で、FECはスティール氏やパーキンス・クイ、フュージョンGPSに対する訴えは取り下げると明らかにした。同氏並びに2社はいずれも不正行為を働いたことを否定している。
クリントン陣営とDNCは選挙資金に関する法律への違反を認めていないものの、民事制裁金を受け入れることに同意したという。
DNCの広報担当者は30日、CNNの取材に答え、FECによる訴えに決着をつけたと述べた。
FECとの問題を担当するクリントン陣営の弁護士は、CNNのコメント要請に応じなかった。どちらの組織も以前、スティール氏の仕事の詳細をリアルタイムでは把握していないと述べていた。またトランプ陣営とロシアとの関係は国家安全保障上のリスクをもたらすとの認識も示していた。上院が20年に行った超党派での調査でも、同様の結論に至っている。