再選出馬のバイデン氏、若い頃は対立候補の年齢を攻撃 「目の輝き失った」
(CNN) バイデン米大統領(80)が再選出馬を表明した。自身の年齢や知力を疑問視する声に直面するバイデン氏だが、かつては対立候補の年齢を激しく攻撃する選挙戦を展開したこともある。
1972年、デラウェア州の地方議員だった当時29歳のバイデン氏は、共和党の現職ケール・ボッグス上院議員を相手に連邦議会選に出馬した。ボッグス氏は州知事を2期務めた経験を持つ先任上院議員だった。
当初引退を希望していたものの、請われて再選出馬を決めたボッグス氏について、バイデン氏は「ケールは出馬を望んでいない。かつての彼にあった長年の目の輝きはもう失われている」と述べた。
あまりに露骨に対立候補の年齢を利用するバイデン氏のやり方に、地元記者の一人は「敬愛すべき老いた父親」作戦と形容した。
当時、バイデン氏は米最年少の上院議員の一人に当選することを目指して出馬していた。現在のバイデン氏はすでに史上最高齢の大統領であり、再選されれば、任期満了時には86歳になる。2期目の任期を全うした場合、史上2番目に高齢の大統領の9歳あまり上を行く計算になる。
CNNは今年2月、バイデン氏の年齢に関する話題でほぼどこも持ちきりだと報じたが、ホワイトハウスの報道官はこの見方に反論した。
ホワイトハウスのベイツ報道官はCNNに対し、バイデン氏は「若い米国民から熱狂的に歓迎される歴史的成果」を挙げていると説明。「その中には気候変動対策への前例のない投資や、バイデン氏としては初となる警察改革の大統領令、地域社会に根ざした警察活動やマリフアナ合法化を支援する取り組み、かつてないほど多くの米国人に医療保険を拡大することが含まれる」としている。
1972年に地元紙やラジオに出稿されたバイデン氏の広告では、「彼は現在の状況を理解している」と強調。スターリンによるロシア支配やヘロインを使用するジャズミュージシャン、ポリオワクチンの開発、1940年代の税金など、ボッグス氏の「世代」にまつわる過去の話題を持ち出すことで、ボッグス氏の年齢をあげつらった。
新聞広告の一つでは、「ボッグス氏の世代はポリオ撲滅を夢見た。バイデン氏の世代が夢見るのはヘロインの撲滅だ」と指摘。別の広告には「ボッグス氏にとって不公平な税金と言えば1948年の人頭税だが、バイデン氏にとって不公平な税金とは72年の所得税を意味する」とある。
ラジオ広告の一つでは、ボッグス氏がロシアの過去の脅威にばかり目を向けており、犯罪のような国内問題をおろそかにしていると踏み込んだ。
「ボッグス氏とバイデン氏の大きな違いの一つは、彼らの懸念事項にある」「スターリンが支配していたボッグス氏の時代、米国民はロシア兵が我が国の通りにやってくるのを想像していた。バイデン氏の時代には、米国民は我が国の通りにいる犯罪者を思い浮かべている。いまの状況を理解しているのはバイデン氏だ」(当時のラジオ広告)
地元紙や当時のメディアの記述によると、この戦略は共和党のウィリアム・ロス上院議員(デラウェア州選出)から反発を招いた。ただ、バイデン氏はその後30年近くロス氏と緊密に協力することになる。
選挙戦は最終的にバイデン氏が勝利。AP通信は「バイデン氏は年齢を強調してボッグス氏に競り勝った」と評した。
ピュリツァー賞を受賞したジャーナリストのノーム・ロックマン氏はこう指摘する。「バイデン氏自身が指示した新しい選挙戦略において、耳障りな熱弁や追及姿勢は控えめになった。このアプローチは突き詰めて言えば、『敬愛すべき年老いた父親は、彼の時代には正しかったかもしれない。彼のことは大好きだが、いまは状況が異なる』というものだ」