現場を去っていく教員たち、背景に銃乱射やパンデミック 米国
(CNN) 米国で教育現場を去っていく教員の多くは自分から申し出て退職していることが、米労働統計局(BLS)のデータから明らかになった。
BLSが発表した暫定集計によると、3月に公立の小中学校や高校、大学の教職から離れた人のうち、半数近くが依願退職だった。
依願退職者の数は新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が始まったころにピークを迎え、2020年末には減り始めた。だがここ2年でまた次第に増加し、米国がもともと直面していた教員不足の問題をさらに深刻化させている。BLSの調査では、教員の求人数は3月の時点で、新規採用者の2倍を超えていた。
米国最大の教員組合、全米教育協会(NEA)のベッキー・プリングル会長はその背景として、学校での銃撃事件が増えていること、パンデミックで学習が停滞した影響で教員らが疲弊していることを挙げた。
CNNの集計によると、昨年5月にテキサス州の小学校で銃乱射事件が起きてから全米各地の学校で発生した銃撃は、5月25日までに66件に達した。
NEAが2018年に実施した調査では、教員の60%以上が自分の学校で銃乱射事件が起きることを心配していた。
また米国のエドウィーク研究センターとメリマック大学が最近実施した調査では、教員の3人に1人が今後2年のうちに転職するだろうと答えていた。一般市民からプロとして尊敬されていないと感じる教員は45%に上った。
NEAによる22年の調査では、教員の半数以上がパンデミックの影響を理由に、自分が早期退職する可能性は高いと答えた。特に中南米系と黒人の教員でこの回答が目立った。
20~21年のデータをみると、公立の小中高校の教員のうち、非白人は20%にとどまっている。プリングル氏は、非白人の教員の必要性は高まっているのに、現場を離れる黒人教員らが後を絶たないと話す。
同氏は教員が去っていく理由として、教育現場にカウンセラーや精神衛生の専門家、看護師らが足りないこと、教員らが児童・生徒の面倒を見る上で制度による支えを感じていないことを挙げた。
さらに、教員の給与が低いことも原因のひとつだと述べた。BLSによれば、インフレ調整後の教員の給与は過去20年間、ほとんど上がっていない。同じような教養や専門性が求められるほかの職業と比べても、低い水準にあるという。