新薬治験で1人脳死、5人入院 仏当局が調査
(CNN) フランスの複数の保健当局者は15日、同国で行われていた新薬の治験に参加した1人が脳死と宣告され、5人が入院していることを明らかにした。フランス保健省は「深刻な事故」とみて調査を進めている。
最初に被験者の症状が表れたのは10日で、北西部レンヌの病院に入院。医師らによると、被験者4人は神経系統が損傷し、恒久的な障害が残る可能性がある。他の1人は症状を示していないものの、医師の監視下に置かれている。
治験を行った会社はウェブサイトで、治験は「国際的な規定を完全に順守する形で」行われ、「すべての段階で自社の規定する手続きにも従った」としている。
マリソル・トゥーレーヌ保健相は15日の記者会見で、治験は中止になったと述べた。保健当局者が残りの治験ボランティアに連絡し、有害な事象の発生について周知している。
治験では、不安感や運動障害の治療を目的として鎮痛剤の使用が試されていた。内因性カンナビノイド系に作用する設計だった。初期の報道では大麻との関連も指摘されたが、トゥレーヌ保健相は薬に大麻や大麻からの抽出物は含まれていないと強調した。
治験には健康と診断された18~55歳の計128人のボランティアが参加。薬は量を変えて90人に投与され、残りは偽薬を投与された。
投薬は1月7日から開始。治験は「フェーズ1」と呼ばれる段階で、人間が服用しても安全かを見極めるのが目的とされる。初期段階の治験で激しい有害事象が現れるのは異例。
薬を開発したポルトガルの製薬会社は声明で、これまでに新薬を投与された被験者では「中程度から重度の有害反応は一切なかった」と述べた。
保健省は治験の手順や医療施設の衛生状態に問題がなかったか調べる方針。