「感染者なし」と主張の北朝鮮、ワクチン開発競争に参入表明の理由は?
香港(CNN) 北朝鮮が、新型コロナウイルス対策ワクチンの開発競争に参入を表明した。国家科学技術委員会の発表を信じるとすれば、北朝鮮国内で開発したワクチン候補は既に臨床試験が始まっており、現在は人を対象とする第3段階の臨床試験の進め方について論議が行われているという。
しかし、この主張は海外から見れば疑わしく思える。新型コロナウイルス対策ワクチンの開発は今、世界にとって特に困難かつ差し迫った課題となっている。開発には巨額の費用がかかる見通しで、各国が多額を注ぎ込んで科学的優位性と国家の威信をかけた競争を展開している。
一方、北朝鮮の医療制度は世界の中でも特に荒廃した状況にあり、ワクチンや予防接種は何十年もの間、世界保健機関(WHO)の支援が頼りだった。しかも北朝鮮は、国内で新型コロナウイルスの感染者が出ていることを公式には認めていない。
では、感染者が1人もいないと主張して、経済的にも窮状にある国がなぜ、ワクチン開発に時間と資金と資源を割くのか。
単純な答えは出せそうにないが、ウイルスに対する心からの恐怖に加え、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長がまたしても困難に立ち向かい、国民を守ってくれると国民に信じさせる狙いがあると思われる。
WHOの北朝鮮担当官エドウィン・サルバドール氏によると、北朝鮮の人口約2500万人のうち、7月初旬の時点で検査を受けたのは922人のみ。流行が始まって以来、2万5551人が隔離され、後に解放された。今月3日の時点でまだ隔離されていたのは255人で、全員が北朝鮮国籍だった。
WHOによると、新型コロナウイルスのワクチン開発は、15日の時点で140種類以上が臨床前評価の段階にあり、23種類が臨床試験の段階に到達している。