ベラルーシ大統領選、野党候補は現職勝利認めず 大規模デモで逮捕者
(CNN) 9日に投票が行われたベラルーシの大統領選で、同国の中央選挙管理委員会は11日までに、暫定開票の結果、現職のルカシェンコ大統領(65)が得票率80.23%で勝利したと発表した。対立候補のスベトラーナ・チハノフスカヤ氏(37)は選挙に不正があったとして現職の勝利を認めず、票の再集計を要求。抗議デモも発生し、負傷者や逮捕者が出ている。
中央選管によると、チハノフスカヤ氏の得票率は9.9%だった。
チハノフスカヤ氏は「私は自分の目を信じる。我々が過半数の支持を得た」と述べ、不正があったと信じる市民は声を上げるように呼び掛けた。またルカシェンコ氏と「平和的な権力移行」について協議の用意があるとも述べた。
9日夜にルカシェンコ氏勝利の結果が公表されると暴動が発生し、翌日も続いた。国営メディアが伝えた内務省の声明によると、警察との衝突で約3000人が拘束され、数十人が負傷した。
ルカシェンコ氏は10日、抗議デモは外国から操られており、国の分裂は容認できないと発言。警官隊も負傷していると述べ、当局はデモ隊に対して引かないとの姿勢を示した。
国際人権団体、アムネスティ・インターナショナルは首都ミンスクでのデモ隊への警察の対応を非難した。
ツイッターは10日、ベラルーシでの同社プラットフォームへのアクセスが遮断されたり制限されたりしていると発表。ネット接続状況の監視団体、ネットブロックスも同日、9日の投票日に断続的に接続が遮断された後、同国で24時間近く大規模な遮断が発生していると報告した。
大統領選で1票を投じる候補者のスベトラーナ・チハノフスカヤ氏/SERGEI GAPON/AFP/Getty Images
チハノフスカヤ氏の陣営や独立系の選挙監視団体は、投票には大規模な票の水増しと改ざんがあったと主張。監視団体「オネストピープル」は、少なくともベラルーシ全土の80の投票所で同氏が勝利したと発表した。別の団体「ゴロス」も100万票以上をカウントした結果、同氏の得票率は80%だったと述べた。
また中央選管が10日に発表した84.23%の投票率についても、投票所に入った人数からの集計結果と比較して大きく差があるとオネストピープルは指摘した。
同団体などによると、選挙監視団体の大半は監視を禁止され、数十人のメンバーが8日から9日未明にかけて拘束されたという。
チハノフスカヤ氏の広報責任者は10日夜、同氏が中央選管の建物で異議の申し立てを行った後、同氏の所在がわからなくなったと発表。その後連絡が取れるようになり無事は確認されたとしたものの、詳細は明らかにしていない。
チハノフスカヤ氏の陣営によると、同氏は投票日の前夜にも、陣営幹部が警察に拘束されたのを受け、安全上の懸念から自身のアパートを離れ身を隠した。同氏の顧問も身の安全のために隣国ロシアに出国。陣営責任者の一人は取り調べのために警察に連行され、その前日には別の責任者が一時拘束されたという。
1994年から政権の座に就くルカシェンコ氏/Handout/Getty Images
欧米諸国からは大統領選に対する非難が相次いだ。
ポンペオ米国務長官は、米国は自由で公正ではない選挙行為を非常に憂慮していると発言。候補者氏名の投票用紙への表示の制限、投票所での選挙監視団体の活動制限、野党候補者への脅し、平和的なデモ隊やジャーナリストの拘束が選挙の手続きを阻害したと批判した。
英国やフランスも選挙の透明性の欠如を問題視し、デモ隊に対する当局の対応を非難した。また、欧州安全保障協力機構(OSCE)や欧州評議会に選挙の監視を認めなかったことに懸念を示した。
欧州理事会のシャルル・ミシェル議長も抗議デモ隊に対する同国の対応を非難。「言論の自由、集会の自由、基本的人権が尊重されなければならない」と訴えた。
チハノフスカヤ氏は元英語教師。大統領選の候補者だった夫で著名ユーチューバーのセルゲイ・チハノフスキー氏が5月に当局に拘束された後、表舞台に立った。
同氏の集会にはこれまで抗議運動のなかった郊外の村でも多くの参加者が集まり、7月のミンスクの集会には過去10年で最大規模の約6万3000人が集まった。
「欧州最後の独裁者」とも評されるルカシェンコ氏は、人口900万人の同国で1994年から大統領を務めている。反対する者を抑圧していると国際社会から非難を受け続け、依然KGBとして知られている同国の秘密警察が反対派の活動家や独立系のジャーナリストを拘束してきた。当局は選挙が間近になると締め付けを強め、突発的なデモを防ごうと多くの逮捕者が出た。
この数週間で発生した抗議デモでは、市民が同国の経済状況やコロナウイルスへの対応、個人の自由や改革の欠如に不満の声を上げていた。