中国の温家宝前首相、習主席を暗に批判? 寄稿が波紋
香港(CNN) 中国の温家宝(ウェンチアパオ)前首相(78)がマカオ紙に習近平(シーチンピン)国家主席を暗に批判したとも取れる文章を寄稿し、波紋を呼んでいる。
寄稿は先週掲載されたもので、表向きは亡き母への追悼文となっている。ただ、その中で公正、正義、人道、自由を求めるとともに、中国共産党が忘れたがっている文化大革命期を振り返っており、多くの読者が習氏への遠回しの批判と解釈した。
温氏の文章に中国のSNSは騒然となった。寄稿文は数十万回にわたって共有され、検閲当局が介入して拡散を阻止する事態となった。
寄稿文を掲載したのはマカオの知名度の低い新聞で、これは恐らく、中国本土では掲載に意欲を示すメディアがなかったことを示しているとみられる。今回の寄稿に関して温氏にコメントを求めることはできていない。
寄稿は昨年12月の母親の死を痛切に悼む内容で、10年間に及んだ文革期の政治的・社会的混乱の中で教師だった父親が迫害されたことに言及。当時、父親は自宅軟禁下にあり、厳しい尋問や叱責(しっせき)、殴打を受けた。特にひどく殴られた後には、視界が遮られるほど顔が腫れ上がったという。
寄稿の末尾で、温氏は中国の理想像を提示しており、国の現状が自身の期待に沿うものではないことを示唆しているとみられる。
温氏は「私の考えでは、中国は公正さと正義に満ちた国であるべきだ」「民意や人道、人の本質が常に尊重され、若々しさと自由、努力する姿勢が常にあるべきだ」としている。
温氏は2003年から13年にかけて首相を務めた。中国指導部の中では比較的リベラルな改革派との見方が多かった。1989年6月の天安門事件で暴力的な弾圧に反対したことで失脚した共産党総書記、趙紫陽(チャオツーヤン)氏の側近トップを務めたこともある。