プーチン氏、ウクライナ分離派支配地域への軍派遣を命令
ウクライナ・キエフ/リビウ(CNN) ロシアのプーチン大統領は21日、「平和維持」任務を名目に、ウクライナ東部の分離派支配地域への軍派遣を命じた。プーチン氏はこの数時間前、ロシアの支援を受けるこれらの地域の独立を承認する大統領令に署名していた。
ロシア軍の派遣がウクライナ侵攻の始まりを示すものなのかは不明。ただ、欧米の複数の当局者は、ウクライナを対象としたより大規模な軍事作戦の最初の一手となる可能性に警鐘を鳴らした。
プーチン氏は同日の激しい演説で、ウクライナ政府による西側諸国との安全保障関係の強化を批判。長時間に及んだ演説はソ連の歴史やウクライナ・ソビエト社会主義共和国の形成に関する内容で、プーチン氏がウクライナの自決権に疑問を投げかけたとみられる場面もあった。
赤色の部分がロシアが支援する分離独立派の実効支配地域。ドネツク州とルガンスク州にいる親ロシアの分離独立派は2014年に独立を宣言。ロシアの支援を受ける反政府勢力とウクライナ軍の同地域での交戦で14年4月以降1万人以上が死亡した/Source: Institute for the Study of War, Council on Foreign Relations, Maps4News, Google Maps Graphic: Henrik Petterson, CNN
プーチン氏は演説で「ウクライナが独立国家の地位を持つ伝統を有していたことは一度もない」とし、ウクライナ東部を「古いロシアの土地」と形容している。
プーチン氏の署名した大統領令では、ウクライナ東部ドンバス地方にある2つの分離派支配地域、「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を正式承認する意向を表明。両地域を独立国と認め、ロシア軍による安全保障の対象としたほか、ロシアの「平和維持部隊」を両地域に派遣する方針を示した。
米政権高官はプーチン氏の演説について、ロシア国民向けに「戦争を正当化」する狙いがあると説明。軍事行動正当化のための誤った主張を多数用いて、「主権を有する独立したウクライナ」という考え方そのものを攻撃するものだと指摘した。
ウクライナ東部の分離派は以前からロシア政府の多大な支援を受けている。米国や北大西洋条約機構(NATO)、ウクライナ当局は、ロシア政府が物資供給や助言、情報提供を行いつつ分離派内部にロシア軍将校を送り込んでいると指摘しているが、ロシアはこれまで常に軍の存在を否定してきた。