アゾト化学工場からの避難、もう「不可能」 ウクライナ東部州トップ
(CNN) ウクライナ東部ルハンスク州の軍政トップは16日、同州セベロドネツクのアゾト化学工場に避難している民間人数百人について、ロシアの砲撃が続いているため、もう避難できない状況だとCNNに明らかにした。
軍政トップのセルヒ・ハイダイ氏は「いまあそこから脱出するのは不可能だ」「物理的には可能だが、砲撃や戦闘が絶え間なく続いており危険性が非常に高い」と指摘。「もし誰かが脱出すれば、99%の確率で死亡するだろう」と述べた。
ハイダイ氏によれば、この化学工場には現在、子ども38人を含む568人が避難している。
セベロドネツク地区の軍政トップは15日、CNNに対し、化学工場に避難中の民間人は食料の蓄えはあるものの、2週間にわたって物資の補給を受けていない状況だと明らかにした。避難している人の大半は工場の従業員やその家族、一部の地元住民だという。
同氏は「彼らは最初からあの場所に隠れている」「あそこには本物の防空壕(ごう)がある」としている。
アゾト工場は巨大な化学製造所で、開戦前は肥料として使われる硝酸アンモニウムの国内最大級の生産拠点だった。ウクライナの実業家が運営するコングロマリット(複合企業)の「グループDF」によると、同工場の年間生産能力は200万トンを超えるほか、アンモニアなどの製造も行っている。
こうした化合物は爆発性が高く人体に有害だが、グループDFは3月、2月末の戦争勃発に伴い素早く工場の安全性の確保に動いたため、周辺地域や住民に危険を及ぼすことはないと明らかにしていた。