ジョンソン氏やトラス氏、スナク氏といった人物から人々が感じる個人的好き嫌いを別にするとしても、保守党が危機から危機へと突き進む、抑えの効かない野獣になっているという感覚は、同党が末期的な衰退を迎えている印象を与える。
保守党の議員も関係者も完全に意気消沈している。わずか数週間前のジョンソン氏の辞任とトラス氏の辞任を比べると、通りに並ぶ同僚議員もいなければ、笑顔の支持者もいなかった。わびしい、冷たい演説が静かな首相官邸前に響いた。
保守党議員の大部分が次の総選挙で勝てる見込みは全くないと感じている。総選挙の実施は政権が決められることだとわかってはいるが、それが意味するところはつまり、可能な限り権力の座に居座るということだ。風向きが良くなるかもしれないという淡い期待を抱きながら座にとどまることなる。
労働党はわずか数週間の間に、次期政権を担う党と前向きに自任していた状況から、完全に怒り狂う状態へと変化した。保守党が何の付託もなく新たなリーダーを選ぼうとしていて、国民から安定した政権を奪っているとの怒りだ。
これが今の英国政治だ。現政権は総選挙を実施しない。寛大な分析では、困難な時期に国が必要としているのは安定だと保守党が考えているため選挙を行わないとの見解が出てくるかもしれない。だが、より皮肉を効かせた分析なら、保守党は今、どれほど選挙で負けるかに恐れおののいている状況にあると示すだろう。
この後48時間以内に状況は明確になってくる。立候補者が名乗り出て、円滑な移行に向けたプロセスも提示される。だが過去1年間の英国政治にならうなら、新首相の就任に続くのは不快な状況説明や汚れた政治になるだろう。我々はもうそれに十分慣れてしまった。
単純な事実はこうだ。当面の間、英国政治の巨大な野獣が、皆ののどにつっかえる状況が続く。国の置かれた状況を考えれば、国民にとってはひどい知らせだ。
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本稿はCNNのルーク・マクギー記者の分析記事です。