「15分都市」が世界規模の陰謀論に変容するまで

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15分都市に反対するプラカードを掲げる女性=2月18日、英オックスフォード/Martin Pope/Getty Images

15分都市に反対するプラカードを掲げる女性=2月18日、英オックスフォード/Martin Pope/Getty Images

FOXニュースや、著名な気候変動否定主義者もこの話題を取りあげた。

一般の人も感化された。パンデミックにより数百万人が心にトラウマを抱え、政府の行き過ぎに現実的な懸念を抱いているとキング氏は言う。「良からぬ連中がたむろする大規模なエコシステムによって、この状況が悪用されている」

偽情報は日和見的

15分都市という考えは、「気候ロックダウン」陰謀論にぴったりはまっている。話をそうした方向に展開しやすいためだ。

「自己充足的な飛び地からは真の都市は生まれないという点では、陰謀論者は正しい。それでは村になってしまう」とマサチューセッツ工科大学のカルロ・ラッティ教授はCNNに語った。建築家であり、エンジニアでもある同氏は、マサチューセッツ工科大学のセンシブルシティーラボの所長を務める。

だが、15分都市は間違って解釈されていると同氏は言う。「地域で暮らす自由を与えるもので、強制するわけではない」

とはいえ、こと気候に関しては「偽情報は日和見的だ」とキング氏は言う。何であれ人為的論争のやり玉に挙げられかねず、注目を集めるようになったとたん、様々な人物が「こぞってなだれ込む」と同氏は付け加えた。

昨年12月、カナダの臨床心理士で気候変動懐疑派のジョーダン・ピーターソン氏がツィートで15分都市を攻撃した。「地域社会が歩きやすくなるべきだという考えは素晴らしい。愚かな暴君官僚が車の運転の『許可される』地域を勝手に決めてしまうのは、この考えの悪用の最たるものだろう」

今年2月上旬には英国の政治家ニック・フレッチャー氏が議会で陰謀論に言及。15分都市を「世界規模の社会主義思想」と呼び、「個人の自由が犠牲にされる」と主張した。

先週末には、インターネット上の陰謀論が現実の抗議デモに発展した。主に市外からやってきた数千人がオックスフォード市内の通りを埋め尽くし、交通制限案と15分都市計画に抗議した。

もちろん、15分都市は数々の批判の声もある。都市が細分化する可能性や、富裕地域と貧困地域の格差がさらに拡大する恐れもある。

オックスフォードシャーのエンライト氏も、交通制限案で地元住民が懸念を抱くのは当然だと認めた。今後も協議を続けるつもりだという。

だが、15分都市の意図を曲解して巨大陰謀論がここまで広まったことは、気候対策にとって憂慮すべき長期的意味合いを持つとキング氏は言う。

気候変動に関する政策は何であれ、国や自治体が実施するのは非常に困難になるだろうとキング氏は警告した。「行政は今、ここまで大きく膨れ上がった敵意と抗議運動で真っ先にやり玉に挙げられている」

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