中国、昨年拘束の台湾政治家を正式に逮捕 国家分裂容疑で
香港(CNN) 中国で昨年拘束されていた台湾独立派の政治家、楊智淵氏(33)が国家分裂を図った容疑で正式に逮捕された。
中国の最高人民検察院が25日にSNSを通して発表したところによると、浙江省温州市の検察が国家安全当局の捜査結果を受け、国家分裂を図った容疑で逮捕を承認した。
楊氏は昨年8月、米国のペロシ下院議長が台湾訪問を終えた数時間後に温州市で拘束された。ペロシ氏の訪台に中国政府は激怒し、台湾周辺で大規模な軍事演習を展開してミサイルを発射。中台間の緊張は数十年ぶりのレベルに達した。
中国の国営放送局、中央テレビ(CCTV)は当時、楊氏が国家分裂活動に参加して台湾独立を支持し、国家の安全を脅かしたために拘束されたと報道。同氏とされる男性が手錠をかけられ、携帯電話などの持ち物を調べられる場面を伝えた。
CCTVはその後、楊氏が自宅軟禁状態に置かれたと報じていた。
中台双方の当局は、楊氏が当時中国を訪れていた理由を説明していない。拘束後の消息はこれまで不明のままだった。台湾の本土問題評議会は中国当局への働き掛けを繰り返してきたが、直接の返答は得られていなかったという。
同評議会は25日、CNNへの声明で、中国が台湾人を「恣意(しい)的」に逮捕して人権や利益を損なっていると非難。中台間の交流に悪影響を及ぼすことは必至だとして、楊氏の無実を改めて主張し、中国共産党に同氏の釈放と即時帰還を求めた。
楊氏は10年以上前から台湾の社会運動に参加し、一度は議会選挙に立候補したものの当選には至らなかった。2019年には独立を掲げる弱小政党の副党首に就任したが、この政党はすでに解散している。
台湾の中央通信社(CNA)によると、中国の上海では先月、台湾の出版社「八旗文化」の編集長、李延賀(通称・富察)氏が警察に拘束された。中国の親族を訪ね、居住地に関する手続きをとるために中国入りした直後だったという。
台湾の本土問題評議会の当局者は先週、李氏は無事だと述べたが、家族の希望を理由に詳細への言及を避けた。
CNAは、台湾内外の記者や学者、報道関係者ら40人が李氏の解放を求める共同声明を出したと伝えている。
八旗文化は24日、フェイスブック上の声明で、李氏の件については今後、家族の立場を尊重してコメントを控えると述べた。