ロシアの航空優勢に直面、F16供与を求めるウクライナ軍パイロット
ウクライナ南部(CNN) ウクライナ軍の航空機2機が轟音(ごうおん)を上げながら、木々のすぐ上を飛んでいく。編隊を組んで向かう先は、ウクライナによる反転攻勢の前線だ。
ソ連時代の航空機であるSu25は大きな音を立ててゆっくりと、大量の黒煙を排出しながら飛行する。まるで地面をはっているように見える。ロシアのレーダーや防空網、何より敵機を避けるためには、可能な限り低空飛行せざるを得ない。
Su25は1980年代に導入された古い航空機で、ロシアのSu35や高度なレーダー、長距離ミサイルの格好の餌食になる。
「こうした迎撃兵器のせいで我々は多くの航空機を失っている」。そう語るのは「プンバ」のコールサインで知られるSu25のパイロット、オレクシー氏だ。同氏は1年半前にロシアのウクライナ全面侵攻が始まって以降、数多くの仲間を失っており、自身や仲間が直面する困難な戦闘については嫌というほど分かっている。
「私は(飛行隊の)リーダーや僚機のパイロットを戦闘で失った」「2人ともウクライナの英雄だ」とプンバは話す。
大切な仲間を失う痛みは今も彼の心に重くのしかかっている。
「仲間が自分の目の前で爆発する光景は衝撃的だ」とプンバは語り、苦しみはそこで終わらないと説明する。
「最大の闘いは己との闘いにある。どうやったら再び空を飛べるかと自問自答して、自分の魂や精神の中にある力を見つけなければならないからだ」
精神的な負担は大きいが、プンバらウクライナ空軍パイロットは圧倒的不利との予想を覆し、開戦から1年半が経過した今なお空を飛び続けている。ウクライナが攻勢に転じた今、彼のような攻撃航空兵が果たす役割はかつてなく大きい。
「この航空機の主な目的は、前線の地上部隊を支援することにある」「最近ではこれが我々の主要任務になっている」と語る。
数や範囲は限られているものの、彼らがもたらす航空支援は貴重だ。
「任務を終えると、地上の要員から感謝のメッセージが送られてくる」「地上部隊の士気向上にもつながっていると思う」(プンバ)
反転攻勢が進行する中、ウクライナ軍地上部隊の直面する大きな問題の一つが、ロシアの航空戦力による足止めだ。ロシアは依然として航空優勢を保持しており、地上軍が前進するのは難しい状況にある。
第128独立領土防衛旅団の部隊副指揮官は、「ベトナムやアフガニスタンでそうだったように、ロシアの航空部隊は波のように押し寄せてくる」「彼らは切れ目なく一日中、ヘリコプターや航空機で行動する」と指摘。「全般的に航空支援がひどく不足している」と語る一方、地上部隊は前進を遂げていると言い添えた。
ウクライナはこれまで、北大西洋条約機構(NATO)や欧州の協力国からSu25とミグ29を計45機受け取った。ただ、重要なのは数だけではない。「ジュース」のコールサインを持つミグ29のパイロットはウクライナ空軍の苦境を認め、欧米諸国から待望のF16戦闘機が供与されれば助けになると訴えた。