ロシアの航空優勢に直面、F16供与を求めるウクライナ軍パイロット
強力なライバル機
米国製のF16は空中給油能力を有し、ウクライナに供与済みのNATO兵器の大半と相互運用できる。生産開始は80年代だが、数回の改良を経て、今ではウクライナのどの保有機よりも高度かつ多用途な機種になった。ロシアがウクライナへの配備をためらっている新型機は例外だが、大半のロシア軍機にとってF16は強力なライバル機になる。
「(もしF16があれば)地上部隊にとって、反転攻勢は今よりはるかに効果的かつ安全な作戦になるだろう」とジュースは語る。「反攻に関しても戦争全体に関しても、F16は真のゲームチェンジャー(戦況を一変させる兵器)になりうる可能性を秘めている。F16はウクライナ軍や我々の抵抗に欠かせない多くの任務を遂行できるからだ」
プンバと同様、ジュースにもロシアの防空兵器やSu35を恐れる気持ちはある。ただ、新戦術を採用することで、ウクライナ側はロシアの兵器の有効性を低減させることができると指摘する。
「我々は回避機動を試み、リスクが最小かつ有利な場面で目標と交戦する機会を見極めようとしている」「ただ、それで我々の安全が保証されるわけではない。ロシア側も学習に努め、戦術を変更しているからだ」
欧米から供与されたミサイルにしても、こうした航空機を使い続けている限り、100%の有効性は発揮できない。
「残念ながら、HARM(高速対レーダーミサイル)の場合、やや制約がある」とジュースは指摘。ウクライナ軍はこうした対レーダーミサイルの潜在能力の25%程度しか活用できていないと説明し、「射程や正確性が限られていることから、100%の潜在能力は引き出せていない」と語る。
「同じミサイルをF16に搭載すれば、有効性は大きく向上する」とも付け加えた。
ジュースやプンバのようなパイロットの訴えは、F16の調達を優先事項に掲げるレズニコウ国防相やゼレンスキー大統領を含め、ウクライナ政府の上層部からも聞こえてくる。
米国を始めとする西側諸国はロシア政府との対立激化を恐れ、少なくとも今のところはF16の供与に抵抗感を示している状況だ。ただ、米国はウクライナのパイロットにF16の運用訓練を行う方針を表明しており、英国やデンマークからは一段と踏み込んだ措置を求める声も出ている。