深刻化するガザの人道状況 国連が「秩序崩壊」の兆しを警告
パレスチナ自治区ガザ地区/エルサレム(CNN) イスラエル軍の攻撃が続くパレスチナ自治区ガザ地区の人道状況について、国連のグテーレス事務総長は29日、「刻一刻と深刻化を増している」と述べ、社会秩序が崩壊し始めたとの認識を示した。
国連によると、現地では追い詰められた住民数千人が支援物資の倉庫に侵入し、小麦粉や衛生用品などを奪う事態となっている。通信網は27日夜から遮断され、29日午前までに復旧したのは一部に限られている。
国連の世界食糧計画(WFP)も支援物資の一部が盗まれたことを認め、飢餓の拡大に懸念を示した。WFPパレスチナ事務所のアブドルジャーベル代表は「住民が希望を失い、刻々と追い詰められている証拠だ。人々は飢え、孤立し、この3週間ずっと暴力と多大な苦難にさらされ続けている」と指摘した。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のガザ地区責任者、ホワイト氏も秩序崩壊の兆しに懸念を示し、住民は恐怖と不満、絶望感を募らせていると指摘した。
ホワイト氏はまた、ガザ北部で避難通告を受けた多数の住民が南部へ移動したことで地域社会に大きな負担がかかり、公共サービスが崩壊しつつあると訴えた。
イスラエル軍は29日、北部住民に避難を急ぐよう新たな通告を出したが、地区内の通信網が寸断されているため、避難通告がどこまで伝わったかは明らかでない。
パレスチナ赤新月社(PRCS)によると、これまでにガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所を通過した支援物資のトラックは計94台前後。29日には食料や医療用品を積んだ10台がガザに入った。
イスラエル軍のハガリ報道官は29日、SNSに投稿されたビデオ声明で、エジプトと米国が主導する人道努力は拡大するだろうと述べたが、詳細には言及しなかった。
イスラエル軍はこれまでガザ地区の物資不足を否定してきた。国連は物資の搬入を大幅に強化する必要があるとして、人道的休戦を呼び掛けている。
イスラエル軍によると、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによる今月7日の奇襲攻撃以降、イスラエル側では1400人以上が死亡した。
パレスチナ保健省はガザ地区からの情報として、イスラエル軍の空爆で少なくとも7950人のパレスチナ人が死亡し、2万人以上が負傷したと発表している。
イスラエル軍は空爆に加え、本格的な地上作戦を開始している。イスラエルのメディアが公開したビデオをCNNが分析したところによると、地上部隊は境界から3キロあまりガザ側に入ったとみられる。28日に撮影されたビデオには、兵士らがガザ側のホテルの屋上にイスラエル国旗を立てる場面が映っていた。
イスラエル軍は29日の声明で、直近の24時間にハマスの司令本部や監視塔、ミサイル発射場など450カ所あまりを攻撃したと発表した。