化石燃料廃止の必要性示す「科学存在しない」、COP議長が衝撃発言を釈明
(CNN) 国連気候変動枠組み条約の第28回締約国会議(COP28)を主導するアラブ首長国連邦(UAE)のスルタン・アル・ジャベル議長が、開催前に開かれた国連が支援するイベントで、世界の温暖化を1.5度に抑えるのに化石燃料の段階的廃止が必要だと示す「科学は存在しない」と発言していたことが判明し、会議に衝撃を与えた。ジャベル氏は発言が誤解されたと釈明している。
科学者や気候変動対策の支持者からは同氏の発言と会議の方向性に対する懸念の声が増している。
化石燃料の将来は本会議で最も議論を呼ぶ論点となっている。一部の参加者は「段階的廃止」を求める一方、別の参加者は「段階的削減」の文言を要求している。さまざまな科学論文では気温上昇を1.5度以下に保つには化石燃料の急速な大幅削減が必要と示されている。
1.5度はパリ協定で目指すべき水準とされ、科学者は1.5度を上回ると人類や生態系が適応するのがより困難になると警告を発している。
ジャベル氏の発言は先月21日、「シー・チャンレンジズ・クライメート」というパネルイベントで飛び出した。英紙ガーディアンが今月3日に報じ、CNNも映像を確認した。ジャベル氏はアイルランドのロビンソン元大統領から化石燃料の段階的廃止を先導する意思はあるかと問われた。
ジャベル氏はこれに対し「化石燃料の段階的廃止で1.5度を達成することになると示した科学、シナリオは存在しない」と発言。この会合は「慎重で成熟した会話」が交わされると思っていたが、「人騒がせな議論に加わる」気はないとも述べた。
ジャベル氏はさらに、1.5度は自身の「北極星」であり、段階的廃止や段階的削減は「不可避」であるとの認識を示しつつ、「我々はそれについて現実的で、真剣で、実践的である必要がある」とも話した。
この点について問い詰めるロビンソン氏に対し、「世界を洞窟時代に戻さずに持続可能な社会経済的発展を可能とする、化石燃料の段階的廃止に向けたロードマップを示してほしい」と尋ねる一幕もあった。
ジャベル氏の議長就任は議論の的となってきた。同氏はUAEの気候変動特使で、再生可能エネルギーの企業の取締役会議長も務める一方で、アブダビ国営石油会社(ADNOC)のトップでもある。
ジャベル氏は4日、記者団に「我々がすることはすべて、科学を中心にしているという点は、私が常に明確にしてきたところだ」と説明。「何らかの混乱、誤った伝達、誤解があると思う」としたうえで、「化石燃料の段階的削減や段階的廃止は不可避だと何度も言ってきた。実際それは必須だが、秩序立って、公平、公正で、責任ある形である必要がある」と述べた。
COP28の報道官もCNNに声明で「議長の議題の進行を妨げる新たな試みの一つに過ぎない」と述べ、議題は透明性が確保され、議長やそのチームによる達成項目で裏打ちされているとの認識を示した。
化石燃料は気候危機の主な要因で、石油や石炭、天然ガスの燃焼が続くことで世界の気温が前例のない水準へと上がっている。
国連環境計画(UNEP)などが最近発表した報告書によれば、2030年には1.5度以下の達成に必要な量の2倍以上の化石燃料が生産されると予想される。この報告書は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)の示したシナリオに基づいている。
報告書の著者の一人でストックホルム環境研究所の研究者、プロイ・アチャクルウィサット氏はCNNの取材に「もしIPCCやIEAが科学に数えられないなら、何がそれに当てはまるのかわからない」と述べ、「二酸化炭素の除去や炭素の回収・貯蔵の方法が拡大しないのなら、すべての化石燃料は段階的に廃止される必要がある」との見解を示した。
今回のCOPでは、初の「グローバル・ストックテイク」と呼ばれる取り組みが行われる。ここでは参加国が気候変動対策での自国の進捗(しんちょく)度合いを評価し、破滅的な温暖化を防止する道筋に世界を導くための計画を立てる。