もっとぐっすり眠りたい? そんな人に筋トレのすすめ 米新研究
(CNN) 夜になかなか眠れない人は、毎週の運動習慣に筋トレ(ウェートトレーニング)を取り入れることをおすすめする。
実際、筋トレには有酸素運動をしのぐ睡眠促進効果があるかもしれないことが、米心臓協会(AHA)の疫学、予防、ライフスタイル、心臓代謝の健康に関する会議で発表された新たな予備研究論文で明らかになった。
この論文を執筆したアイオワ州立大学の運動学助教アンジェリーク・ブレレンシン氏は、「有酸素運動をするとよく眠れるというのは、科学的根拠に基づく確立した理論だ」とした上で、「しかし、我々の研究の結果、どうやら筋トレには、有酸素運動だけでなく、有酸素運動と筋トレを両方行った場合をもはるかに上回る睡眠改善効果がありそうだということが分かった」と付け加えた。
この研究論文によると、1年間筋トレのみを行ったグループは、夜間の睡眠時間が平均40分増えたのに対し、12カ月間有酸素運動のみを行ったグループは平均で約23分、筋トレと有酸素運動を両方行ったグループは平均で17分の増加だったという。
運動と睡眠
運動は、夜に十分な睡眠を取ることも含め、心臓や脳など、健康全般を改善するためにできる最も重要なことの一つだが、これまでの研究は主に睡眠における有酸素運動の役割に重点を置いてきた。
有酸素運動とは、一定時間(通常は15~30分間)持続的に行うことにより心拍数を上げる運動で、バスケットボールなどのチームスポーツのほか、ランニング、水泳、サイクリング、ローイング、縄跳び、早歩きなどが典型例だ。
一方、筋トレの例としては、重量挙げ、マシンや弾性抵抗バンドを使ったトレーニング、さらにランジ、腕立て伏せ、懸垂といった自重トレーニングなどが挙げられる。ウェートトレーニングは、筋繊維に負荷をかけ、壊れた筋繊維を体に修復させることにより、筋力が強化される。
この研究では、まず運動不足、太りすぎ、高血圧という条件のそろった386人のグループが12種類のトレーニングマシンを順番に使用し、1セットあたり8~16回の運動を3セットずつ行った。
また別のグループは、トレッドミル、エリプティカル、各種バイクを使って有酸素運動を行い、その間、運動の強さを中程度~激しいレベルに維持するように、監視員らが被験者らの心拍数を監視した。
筋トレを行うグループと有酸素運動を行うグループは、それぞれ監視された状態で週3回、1日60分間運動を行った。また第3のグループは週3回、筋トレと有酸素運動の両方をそれぞれ30分ずつ行い、さらに第4のグループは全く運動をしなかった。
ブレレンシン氏によると、この研究の結果、筋トレのみを行ったグループは、睡眠時間が40分増えただけでなく、夜間に目が覚める回数が減り、さらに15分間分睡眠効率が向上したという。
また筋トレと有酸素運動を両方行ったグループも睡眠効率は上がったが、筋トレのみを行ったグループほどではなかった。有酸素運動のみを行ったグループと運動しなかったグループにこれといった改善は見られず、すでに十分な睡眠を取っていたグループも睡眠の改善は見られなかった。
有酸素運動よりも筋トレの方が睡眠の質の向上に効果がある理由はまだ分かっていないが、ブレレンシン氏にはいくつかの持論があるという。
まず、ウェートトレーニングを行うことにより筋細胞の成長が促され、体内のテストステロンと成長ホルモンのレベルが高まる。これらのホルモンの両方がより広範囲にわたり、眠りの質と深さに関連していたという説だ。
もうひとつの説は、ウェートトレーニングを行うと組織内の微細な傷に筋肉が適応せざるを得なくなり、その結果より強力な信号が脳に送られて夜に一段と深い回復状態に入れるというものだ。
「そもそも我々がなぜ眠るのかと言えば、それが1つの回復プロセスだからだろう。睡眠によって脳は体に活力を与えたり、修復したりできるようになる」(ブレレンシン氏)
しかし、有酸素運動にも間違いなく多くの健康効果があり、このような研究結果が出たからといって有酸素運動を始めるのをやめたり、今まで行っていた有酸素運動を中止すべきでないとブレレンシン氏は指摘する。
その上で「重要なのは、もし睡眠に不安があるなら、毎週の運動に筋トレを取り入れる努力を意識的に行った方がいいということだ」とし、さらに「筋トレと有酸素運動の両方を行うことにより、より包括的かつ長期的な健康効果と上質の睡眠が得られるだろう」と付け加えた。