そのため外国企業は、中国市場への参入許可を得るために、現地のパートナー企業と共同で合弁事業を立ち上げるなど、事業の部分的譲渡を余儀なくされることも少なくない。近年、一部の規則は緩和されたが、参入と引き換えに技術を差し出さなくてはならないと不満を漏らす企業にとって、このシステムは依然としてストレスの原因となっている。
一方、規則に従わない企業は中国市場から完全に締め出されてきた。米グーグルもその1社だ。グーグルは2006年から10年まで、中国で検閲機能を備えた検索エンジンを提供していた。しかし、検索結果の検閲の中止を決定したため、市場から締め出された。それから数年後、グーグルは中国市場への復帰を検討したが、中国共産党の膨大な検閲装置を警戒する人権団体から強く批判された。
論争の巻き添えに
一方、中国市場にうまく参入できた企業も、いつの間にか論争に巻き込まれ、損害を被ることもある。
その一例が米プロバスケットボール(NBA)だ。2019年に、NBAヒューストン・ロケッツのゼネラルマネジャーを務めていたダリル・モーリー氏が、香港の民主化運動を支持するツイートを行ったのをきっかけに、NBAは中国政府と対立する羽目に陥った。中国国営の中国中央テレビ(CCTV)はNBAの試合の放送を中止し、中国のすべてのパートナー企業もNBAとの協力関係を停止した。
中国当局と比較的緊密な関係にある企業も例外ではない。中国政府から特別待遇を受けてきた米電気自動車(EV)大手テスラも最近、上海で生産している主力EV「モデル3」の製造品質や、車載カメラのスパイ活動への転用可能性の問題で守勢に立たされた。同社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はその数日後、CCTVのインタビューで、中国の二酸化炭素(CO2)排出量や経済成長への取り組みを大絶賛した。
中国における企業リスクに特化した調査会社ストラテジー・リスクスの創業者兼CEO、アイザック・ストーン・フィッシュ氏は「各企業はすでに(中国と欧米の)どちらの側につくかの選択を迫られているが、公の場で立場を表明する事態を何とか避けようと躍起になっている」と指摘する。フィッシュ氏は、世間に態度を表明したことで大損害を被った最も評判の悪い例としてロケッツのモーリー氏のツイートを挙げた。
フィッシュ氏は「欧米の企業は、自分たちにとって最も重要な市場と最も重要な成長市場とのバランスを取ろうとしており、時に倫理的な犠牲を払うこともある」と付け加えた。
不利な立場に立たされる外国企業
中国との取引に関して、不利な立場に立たされるのは大抵、外国企業だ。