「危機的に少ない」石油備蓄
観測筋はOPECは増産の必要があるとの見方でおおむね一致しているものの、OPECは合意に至らなかった。当初1日の予定だった会合は3日後に険悪なムードで終わり、今後も合意は見通せない。アラブ首長国連邦(UAE)とサウジ、ロシアが合意の枠組みをめぐり対立している状況だ。
ゴールドマン・サックスの6日の顧客向け報告書によると、石油市場の大幅な供給不足を解消するには、石油生産を日量500万バレル増やす必要がある。
この規模の供給がなければ、世界の石油備蓄は「危機的に少ない水準」に低下するという。
バイデン氏が石油高騰は誰のためにもならないと説得力のある主張を展開することは可能だ。やがて人々は旅行を減らすだろうし、燃料消費量の多いSUV(スポーツ用多目的車)から電気自動車に切り替えるドライバーが増える可能性すらある。
オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏は、こうした会話がどこに向かうのかを自らの経験で知っている。11年のリビア内戦の時、オバマ氏はOPECに増産を呼び掛けることを迫られた。
オバマ氏は当時、デトロイトのテレビ局に対し「サウジのような主要産油国と多くの協議を行い、米国経済が石油高騰に足を引っ張られれば彼らにとっても良くないと伝えようとしている」と述べた。
米国のシェールオイルは助けにならない?
それから10年。オバマ、トランプ両政権で米国の石油生産は急増したが、バイデン氏は米国がいまだにOPECを必要とする現状を目の当たりにしている。
シェール革命の追い風を受け、米国内石油生産は20年3月には過去最高の日量1310万バレルに達した。だが、コロナ禍が米国のフラッキング(水圧破砕法)業者を直撃。人々が航空機や自動車の利用をやめ、需要は崩壊した。そこにサウジとロシアの壮絶な価格競争が追い打ちをかけた。
米経済は好況に沸くが、米石油生産量は昨年のピーク時から日量200万バレル程度減ったままだ。
「シェールは助けに来られない。価格高騰が手に負えなくなる事態を防ぐにはOPECが必要だ」。RBCのストラテジスト、クロフト氏はそう指摘する。「15年当時、人々はシェールのせいでOPECの時代は終わったと書いていた。だが、今主導権を握っているのはOPECだ」