ロシアに進出した欧米ブランドの多くは14年以降、政府の圧力に屈し、サプライチェーン(供給網)の一部またはすべてを現地化した。そのためこうした企業が撤退すると、ロシア側は比較的簡単に買収し、包装紙やパッケージを変えるだけで経営を続けることができた。
「人員も、商品も、供給も同じままだ」(ウェーファー氏)
とはいえ、鉄壁の戦略ではない。
マクドナルドの後継店は7月中旬にフレンチフライの品不足を発表した。ロシアのジャガイモの収穫量が減少したが、制裁のために海外の供給業者で穴を埋めることができなかったためだ。
ロシアのエネルギー特需は続くか
ファストフードの継続はともかく、ロシアの長期的安定はエネルギー分野に依存している。エネルギーは今もなお、政府の歳入源の大部分を占めている。
エネルギー価格の高騰によってロシアが孤立していると言うのは言葉足らずだろう。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、今年3~7月の欧州向けロシア産石油とガスの輸出額はここ数年の平均額よりも倍増している。それとは裏腹に、輸出量は減少。IEAのデータによれば、欧州向けのガス輸出量はこの12カ月間で約75%減少している。
石油のほうは事情が異なる。制裁や制裁の恐れから、ロシア産の石油は4月以降、1日あたり300万バレル市場から減るというIEAの3月の予測は外れた。エネルギー調査会社ライスタッド・エナジーの専門家によれば、夏に若干減少したものの、輸出は継続している。
その主な要因は、ロシアがアジアで新たな市場を開拓できたことだ。
コモディティー・コンサルタント会社ケプラーのホマーユーン・ファラクシャリ氏によると、戦争が勃発して以来、ロシア産石油は海上輸送でアジアに流れているという。対アジア輸出が占める割合は昨年7月はわずか37%だったが、今年7月は56%だった。
中国は今年1月から7月にかけて、大幅に値下げされたロシアのウラル原油を海路で大量輸入した。ケプラー社のデータによれば、前年同期比で40%増だった。中国が当初、ロシアのウクライナ侵攻に対し、ロシア側についたとみられるのを避けようとしていたのとは大違いだ。ケプラー社によれば、インドへのロシア産石油の海上輸送も前年比で1700%以上も増加。シベリアのパイプライン経由でロシアから中国へ供給されるガスの輸出量もやはり増えている。
ロシア産石油の90%を禁輸する欧州の政策が12月に施行されれば、事情は大きく変わるだろう。1日あたり推計200万バレルのロシア産石油が行き場を失うとみられている。一部はアジアへ流れるだろうが、すべて吸収できるほどの需要があるかどうか、専門家は懐疑的だ。
中国も国内需要が減速し、ロシアが輸出する種類の石油もそこまで必要ではないため、これ以上ロシア産石油を購入することはできないだろうとファラクシャリ氏は言う。