価格も重要なカギを握ることになるだろう。果たしてロシアは値下げを続けて新たな市場を維持することができるだろうか。
「1バレルあたり120ドルから30%の値引きも考えものだが」とネチャーエフ氏は指摘する。「1バレルあたり70ドルから値下げするとなると、話はまた別だ」
「真綿で首を絞める」
ロシアのエネルギー産業は世界的インフレに助けられているものの、ロシア国民は痛手を負っている。欧州の大半の地域と同様、ロシア国民もすでに生活費の上昇に苦しんでいる。そこへウクライナでの戦争が拍車をかける。
1990年代に今よりもはるかに厳しい経済崩壊を乗り越えたネチャーエフ氏も懸念の色をのぞかせる。
「生活水準に関して言えば、実質収入でみた場合、ロシアは約10年前に逆戻りしている」(ネチャーエフ氏)
ロシア政府は大金をかけてこれに対抗しようとしている。5月には年金受給額と最低賃金の10%引き上げを発表した。
「ロシアでの業務を停止した」企業の従業員が、就業契約に違反することなく一時的に別の会社に転属できる制度も立ち上げた。また170億ルーブル(約380億円)を支出して、海外メーカーのメンテナンスおよび部品供給を阻止する制裁や領空飛行禁止の打撃を受けたロシアの航空会社の債券を買い上げた。
航空業界に対する制裁と同様、テクノロジー分野での制裁もロシアの長期的な経済見通しに甚大な影響を及ぼす可能性がある。ジーナ・レモンド米商務長官は6月、戦争が勃発してからロシアへの世界の半導体輸出が90%激減したと述べた。これにより、自動車からコンピューターまであらゆるモノの製造が停滞しており、専門家はロシアは世界的な技術競争ではるかに後れを取るだろうとみている。
「制裁の影響は、短期的打撃というより、むしろ真綿で首を絞めるようなものになるだろう」とウィーファー氏も言う。「現在ロシアの前には、長期停滞の可能性が横たわっている」
ネチャーエフ氏はさらに断定的だ。「経済衰退は今もうすでに始まっている」