旅行需要回復もインフレで費用節約、高級ホテルは敬遠
ロンドン(CNN) 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)で大きく落ち込んだ世界の旅行需要は順調に回復してきたものの、インフレの影響で費用を節約する傾向が目立っている。
旅行予約サイト大手、独トリバゴのアクセル・ヘファー最高経営責任者(CEO)が、CNNとのインタビューで語った。
5段階の格付けで手頃な二つ星から三つ星のホテルが人気を集め、高級な四つ星、五つ星は敬遠されているという。
目的地にも物価の安い場所を選ぶ旅行者が多い。世界各地のホテル料金を比較できるトリバゴのユーザーの間では、モロッコやポルトガルへの関心が高まっている。
英国では引き続き国内旅行の需要が高い。この数カ月で通貨ポンドの相場が大きく変動し、国外旅行の計画が立てにくかった事情がうかがえる。
旅行業界は今年、需要回復と高い料金を背景に、売り上げを伸ばすことが予想される。
国際航空運送協会(IATA)の予想によると、今年は経済の減速にもかかわらず、世界の航空会社が4年ぶりに黒字に転換する見通しだ。
航空券の予約は今のところ、パンデミック前のレベルまで戻っていない。スペインの旅行調査会社、フォワードキーズのデータによると、年初から今月2日までの世界の予約件数は、2019年の同じ時期を22%下回っていた。
だが、それもまもなく変わるだろう。世界最大の旅行市場である中国が、新型コロナの厳しい水際対策を撤廃したからだ。世界観光機関(WTO)は、国際観光客到着数が今年、パンデミック前の80~95%に達すると予想している。最終的な数字は経済減速やアジアの旅行需要回復、ロシアのウクライナ侵攻といった要因で決まると考えられる。
ヘファー氏はアジアや欧州、北米の主要都市でこの夏、中国からの旅行者が急増し、それによってホテルの宿泊料金や航空券の価格が高騰する可能性を指摘する。航空業界ではすでに人手不足や機体の納期遅れから、運賃が昨年の同じ時期より大幅に高くなっている。
ツアー会社の独TUIは14日、直近4週間の予約状況と平均料金がパンデミック前を上回ったと発表した。ツアー客は昨年の230万人から330万人に増え、今年の冬、夏シーズンの予約は870万件に上っている。
アイルランドの格安航空大手、ライアンエアは昨年10~12月期に料金をパンデミック前より14%値上げし、過去最高の純利益を記録した。米国やアジアからの需要が増大する一方で他社との競争は鈍化していることから、春のイースター休暇から夏にかけてさらに運賃を引き上げる構えだ。