報道から消えるウクライナ戦争、ガザ紛争激化の裏で関心低下顕著に

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ウクライナ東部ドネツク州の前線に掘った塹壕で戦闘配置に着くウクライナ軍兵士/Diego Herrera Carcedo/Anadolu via Getty Images

ウクライナ東部ドネツク州の前線に掘った塹壕で戦闘配置に着くウクライナ軍兵士/Diego Herrera Carcedo/Anadolu via Getty Images

(CNN) テレビのニュースで、ウクライナからの中継映像を最後に見たのはいつだろうか。恐らくは、ずいぶんと前になるのではないか。

中東での戦争の過熱を受け、長引く東欧での戦争はメディア報道においてほぼ後回しの扱いとなった。ロシアのプーチン大統領によるウクライナへの残虐な作戦行動は、イスラエル・ハマス紛争の勃発以前と比較するとメディアからの注目度が激しく落ち込んでいる。

世界のメディア報道を追跡するGDELTプロジェクトが分析したネットやテレビでの映像字幕のデータによれば、ケーブルテレビ局でのウクライナ戦争の報道はイスラム組織ハマスが遂行した先月7日のイスラエル南部でのテロ攻撃以降、劇的に減少した。

イスラエル・ハマス戦争前、ウクライナでの戦闘はCNNのテレビ報道の約8%を占めていたが、ハマスの奇襲後の割合は1%を切っている。

米連邦議会下院の議長選びが混沌(こんとん)としていた当時の状況下、報道におけるウクライナへの言及は目に見えて増えたものの、主な焦点はあくまでも米国による同国への資金援助であり、実際の戦況ではなかった。

インターネット分析会社のコムスコアが提供したデータからは、ネットでも同様の傾向が生じているのが見て取れる。そこではソーシャルメディア上で、ウクライナ戦争についての議論がイスラエル・ハマス紛争勃発以降著しく減少していることが示唆される。ただ全般的にはプーチン氏によるウクライナ侵攻に対する関心自体が、過去数カ月間は薄れていたともみられる。

中東情勢以外にも、米国のメディアはこの数週間、複数の重要な話題の報道に追われていた。議会の混乱やトランプ前大統領の裁判、メーン州で起きた銃乱射事件などだ。

現状のウクライナに対する関心低下は、プーチン氏にとって恩恵以外の何物でもない。

米ハーバード・ケネディー・スクールのベルファー科学国際問題センターの上級研究員で、米中央情報局(CIA)に25年勤務した経歴を持つポール・コルベ氏は、記者の取材に対し、イスラエルとハマスの間の戦争によって米国の関心がロシアからそれるのをプーチン氏は「喜んでいる」に違いないと指摘した。その上で、こうした中にあってロシアは「ウクライナの都市や民間人を狙った攻撃を続けている」と述べた。

また西側がウクライナ戦争の報道を減らす一方、ロシアは虚偽や誤情報を拡散する独自の情報戦を展開しているともコルベ氏は分析。西側の忍耐力と支援を疲弊させ、米国内や北大西洋条約機構(NATO)加盟国間に分断を引き起こすのがプーチン氏の戦略だとの見解を示した。

コルベ氏によれば、プーチン氏はメディアを活用し、ウクライナを分断した腐敗国家として描写しようとしている。ウクライナに対して、米国とNATOの傀儡(かいらい)との印象付けを図ることがプーチン氏の戦略の中心だという。

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