インフルエンザ予防に懸念、ワクチンの変異で効果減退
ヘンズリー氏の研究チームは昨シーズンで2番目に配布されたウイルス株に着目した。ワクチンのもとになる株は鶏卵を使って培養するのが一般的だが、そうしたワクチンの配列を、流行しているウイルスの配列と比較したところ、明らかな変異が確認されたという。
変異の影響を調べるため、ワクチンを動物と人に投与して調べた結果、動物でも人でも抗体がインフルエンザのウイルスに結合できず、無力化できていないことが分かった。
米国ではほとんどのワクチンが鶏卵を使って製造されるが、ごく少量ながら昆虫や哺乳類の細胞が使われる場合もある。この製法を使ったプロテイン・サイエンシズ社の「フルーブロック」を動物と人に投与したところ、いずれも優れた抗体反応があり、流行しているH3N2型ウイルスに結合して無力化できることが判明したという。
ただ、現代のワクチンは鶏卵を使って量産する態勢を確立していることから、細胞を使った製造に切り替えようとすれば、製造設備を切り替えるだけでも膨大な経費がかかり、問題の解決は簡単ではない。
今年のワクチンも昨年と同じウイルス株を使って製造されているといい、「今年は特に難しくなるかもしれない。昨年発生した卵馴化変異に加え、H3N2が進化している徴候がある」とヘンズリー氏は解説している。