「極めて特異なブラックホール」、8千光年の彼方で観測
(CNN) 地球からおよそ8000光年の距離にあるブラックホールが、プラズマの雲を宇宙空間へ絶え間なく噴出し続けている現象が観測されたと、国際研究チームが4月29日の科学誌ネイチャーに発表した。
「V404シグニ」と呼ばれるこのブラックホールは他のブラックホールと異なり、数分間隔であらゆる方向に向けてプラズマの雲を噴出させていると見られる。
オーストラリア・カーティン大学のジェームズ・ミラージョーンズ准教授は「私が遭遇した中でも極めて特異なブラックホール」と位置付ける。
同氏によると、V404シグニは通常のブラックホールと同様に、周辺の天体をのみこんでガスを吸収しながら物質の渦を形成し、この渦はブラックホールを取り巻いてらせんを描きながら重力に引き寄せられている。
しかし物質の渦とブラックホールの配置がずれているために、渦の内部がぐらつくこまのように回転し、方向を変えながらさまざまな角度にジェットを噴出させている。「こまの回転が遅くなると不安定になってぐらつくような状態。ただしこの場合、ぐらつきはアインシュタインの相対性理論によって発生している」(ミラージョーンズ氏)。
ブラックホール自体も回転していて、非常に強い重力のために周辺の空間と時間を引き寄せる。この現象は「慣性系の引きずり」と呼ばれる。
V404シグニの質量は太陽の9倍、円盤の直径は1000万キロ。光速の60%の速度で物質を放出している。
このブラックホールは1989年に発見され、それ以前にも1938年と1956年にアウトバースト(急激な光を放つ現象)の記録が残っていた。2015年には2週間続いたアウトバーストで世界中の天文ファンの注目を浴びた。