環境にやさしく費用も安い、樹木葬への関心高まる 英国
死のコスト
今、遺体の埋葬にかかる環境コストに対する関心が高まっている。
米非営利組織、緑の埋葬評議会によると、米国だけで毎年430万ガロン(約1630万リットル)の遺体防腐処理用薬液(ホルムアルデヒドなどの有毒成分を含み、それらの成分が土壌に染み込む恐れがある)、160万トンのコンクリート、6万4500トンのスチールが埋葬に使われているという。また火葬による二酸化炭素(CO2)排出量は17億4000万ポンド(約79万トン)で、これは乗用車17万台の1年間の総排出量に相当する。
無論、一部の宗教の信者は、遺体を地球に無害な方法で埋葬している。例えば、ユダヤ教は伝統的に松などの天然木で作られた棺を使用し、遺体防腐処理も認められていない。またイスラム教でも遺体の防腐処理は行わず、リンネル(亜麻布)や綿布に包んで埋葬する。
しかし英国では、遺体をあえて地球にプラスになる方法で埋葬するというのは、かなり新しい概念だ。ロイデン氏が2006年にウッドランド・ベリアル・トラストを設立した時、世間から「非常に変わった組織」と見られたという。設立当時、同組織が行った埋葬の回数は、ロイデン氏の推定で月に1回だったが、現在は週に数回行っており、その数は昨年、3割近く増加したという。
また自然葬は、従来の埋葬に比べ費用を大幅に抑えられる。遺体の防腐処理の費用を省けるだけでなく、標準的な棺が数千ドル(数十万円)もするのに対し、柳製の棺は700ドル(約7万7000円)ほどしかかからない。また英国の墓地の区画は、場所によって価格が大きく異なるが、ウッドランド・ベリアル・トラストの墓地の区画は一律850ポンド(約13万円)だ。
自然葬の人気は英国以外でも高まっている。19年に米国で行われた調査では、回答者の半数以上が緑の埋葬の選択肢の検討に興味を示した。また、緑の埋葬評議会によると、現在、米国とカナダには合わせて300カ所以上の緑の埋葬墓地があるという。