コアラ激減させるクラミジア 気候変動で状況はさらに悪化
オーストラリアのサンシャインコースト大学の微生物学教授ピーター・ティムズ氏は、環境問題が原因でコアラのストレスホルモンが上昇すると、感染症は比較的軽微な問題から「より深刻な問題」になることが多いと指摘する。
ティムズ氏によると、生息地の喪失と気候変動に同時に直面することにより、コアラたちは慢性的にストレスを感じ、免疫機能が低下するという。
コアラへのクラミジアワクチンの試用
しかし、間もなくオーストラリアのコアラたちを救う救世主が現れるかもしれない。
現在、コアラたちを重度の感染症から守る手段として、ティムズ氏が10年かけて開発したクラミジアワクチンをオーストラリアのコアラの個体群に試験的に接種している。
ティムズ氏は「ワクチンで感染率が下がることは分かっている」とした上で、「しかし感染がゼロになることはない。感染を完全に抑え込むワクチンは存在しないが、ワクチン接種により感染率は大幅に下がる」と付け加えた。
ティムズ氏は、コアラへのワクチン接種により感染率が低下することが期待されるが、野生の個体群におけるクラミジアの感染拡大を監視することは困難だと指摘する。
ワクチンの別の治験に関わっているシドニー大学のクロッケンバーガー教授も、ワクチンの目的は個々のコアラのクラミジア感染症の進行を止めることではないと語る。
「コアラは(クラミジアに)慢性的に感染しても、ある程度幸せに生きられる場合が多い。ただ子が産めないだけだ」(クロッケンバーガー教授)
すでに感染してしまったコアラの病気の進行を止めるのではなく、コアラがクラミジアに感染しにくくすることにより、他のコアラに感染が広がるのを防ぎ、繁殖能力を持つ個体群を維持するのが狙いだ、とクロッケンバーガー教授は言う。
「また、未感染のコアラたちがワクチン接種を受けることにより、クラミジアに感染しにくくなることも期待している」(クロッケンバーガー教授)
ティムズ氏は、クラミジアワクチンの安全性と効果が証明されたら、病院に運ばれたコアラがワクチン接種を受けられるようオーストラリア中の野生動物病院にワクチンを提供したいとしている。