交通機関でのマスク着用、自分だけでも効果はあるのか
(CNN) 新型コロナウイルス感染対策としてバイデン米政権が義務付けていた公共交通機関でのマスク着用について、南部フロリダ州の連邦地裁が18日に違法との判断を下したことを受け、一部の乗客らは早速マスクを外し始めた。機内などで自分だけがマスクを着けている場合でも、感染を防ぐ効果はあるのだろうか。
空気中に浮遊する粒子「エアロゾル」とマスクの関係を研究しているカリフォルニア大学デービス校のクリス・カッパ教授は、マスク着用義務が解除された18日にカリフォルニア州サクラメントからサンディエゴへ飛行機で移動した。
機内では次第にマスクを外す乗客が増えていったが、カッパ氏は終始、高性能の「N95マスク」を着けていたという。
同氏によれば、マスクを周囲の人々が着用せず、自分だけが着けている「一方通行」状態での予防効果は主として、自分の顔にマスクがどの程度フィットしているか、マスクの素材がウイルスを含む粒子をどれくらい除去できるかという2つの要因によって決まる。N95や「KN95マスク」は不織布マスクより、不織布マスクは布マスクより効果的とされる。
どのマスクが顔の形に合うかは人によって違うが、よくフィットしたN95マスクを着けていれば、周囲の人々がマスクなしだとしても、自分が吸い込む感染性の粒子は20分の1以下に減るという。
米疾病対策センター(CDC)が2月に発表した研究結果では、昨年2月から12月の間に屋内の公共施設で常にマスクを着けていた人は着用しなかった人に比べ、新型コロナの検査で陽性反応を示す確率が低かった。
使っているマスクの種類を答えた500人あまりの陽性率はマスクなしのグループに比べ、布マスク派が56%、不織布マスク派が66%、N95またはKN95のグループが83%低いという結果が出た。
ミシガン大学アナーバー校のプリ―ティ・マラニ博士はこの2年あまり、新型コロナに感染した患者の治療にあたってきた。患者はマスクを着けていないことも多いが、マラニ氏は着用している。
同氏は「私自身の知る限り、今まで感染はしていない。ワクチン接種と換気を合わせれば、マスクの予防効果は非常に高いということだ」と話す。重症化のリスクがある人でもワクチンや検査、顔にフィットした高性能マスクなどの対策を講じていれば、たとえ周囲がマスクなしでも公共交通機関を必要以上に怖れることはないというのが、同氏の見解だ。
マラニ氏は近く、ポルトガルでの学会に出席する。渡航先で感染して帰国が遅れる事態を避けるため、機内では常時マスクを着用するつもりだという。
カッパ氏によれば、移動中の機内やバス、列車内は盛んに換気されているが、到着して降りる前に並んで待つような時間帯は感染リスクが高くなるため、特に注意が必要とされる。
米国では現在、5歳未満の子どもはワクチンの接種対象になっていない。一部の専門家からは、希望者が全員接種できるようになるまで、マスク着用義務を解除するべきでないとの意見も上がっている。