HIVワクチン候補、臨床試験で97%に免疫反応 「重要な一歩」
(CNN) エイズウイルス(HIV)ワクチン候補の投与によって、感染予防に役立つ広域中和抗体を作り出すことに成功したというフェーズ1の臨床試験結果が、世界エイズデーに当たる1日、科学誌サイエンスに発表された。8週間間隔でワクチンを2回接種すれば、HIVに対する免疫反応を引き起こすことができるとされ、専門家は「重要な一歩前進」と位置付けている。
エイズはHIV感染によって引き起こされる疾患で、現時点で治療法はない。
臨床試験結果は米スクリプス研究所やフレッドハッチンソンがんセンター、国立衛生研究所など米国とスウェーデンの研究機関が発表した。
ワクチン候補「eOD―GT8 60mer」を36人の被験者に投与した結果、「良好な安全性プロフィール」が確認され、1人を除く全員(97%)に広域中和抗体がつくられたとしている。
抗体は感染を防ぐため免疫反応によってつくられるたんぱく質。これまでワクチンによってHIVに対抗する中和抗体を産生させることは難しいとされてきた。
今回のワクチン候補は生殖細胞系をターゲットとするもので、抗体を産生する細胞を狙って刺激することで、広域中和抗体をつくらせる仕組み。
eOD―GT8 60merの安全性と効果を調べるためのフェーズ1の臨床試験は2018年、18~50歳の健康な大人48人を対象として、米ジョージワシントン大学と米フレッドハッチンソンがんセンターで開始した。
被験者のうち18人には20マイクログラムのワクチンを投与し、8週間後に同量のワクチンと補助薬を投与。別の18人には100マイクログラムのワクチンを投与し、8週間後に同量のワクチンと補助薬を投与した。残る12人にはプラセボ(偽薬)を2回投与して、それぞれ血中とリンパ節の免疫細胞を調べた。
被験者に重大な副反応はなく、HIVに感染した被験者もいなかった。48人のうち、1人を除く97%は、関節の痛みや倦怠(けんたい)感、頭痛など軽度から中程度の副反応を訴えたが、ほとんどは1~2日で回復した。
1回目の投与後、プラセボを投与された以外の全員に、eOD―GT8 60merによって産生された抗体が認められた。2回目の投与後は、ワクチンによってできた抗体反応の上昇がみられたとしている。
今回の研究にかかわっていない米エモリー大学エイズ研究センターのカルロス・デルリオ共同所長は、この臨床試験結果を評価しながらも、実用化に向けてはまだやるべきことがたくさんあると指摘している。