アルツハイマー新薬、臨床試験で進行抑える効果 安全性に懸念も
(CNN) 米バイオジェンと日本のエーザイが開発しているアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の臨床試験で、認知機能の低下を抑える効果がみられたことを示すデータが発表された。一方で安全性への懸念も浮上している。
バイオジェンとエーザイは11月29日、抗体医薬品のレカネマブについて、臨床試験の最終段階である第3相試験のデータを米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表した。両社は2カ月ほど前、第3相試験で認知機能の低下を27%抑える効果が確認されたと発表していた。
これに先立つ第2相試験では、レカネマブを1年間投与したグループとプラセボ(偽薬)のグループの間に意味のある差はみられなかった。
米アルツハイマー協会は29日、第3相試験の詳細なデータに勇気づけられているとの声明を発表。レカネマブによって患者が日常生活に参加し、自立した暮らしを続けられる期間は延びることが示されたと述べた。
第3相試験は北米、欧州、アジアの計235カ所で、2019年3月から21年3月までの間、アルツハイマー病初期の軽度認知障害(MCI)などが認められる50~90歳の成人1975人を対象に実施された。
参加者のうち無作為に選んだ約半数には、2週間ごとに点滴でレカネマブが投与され、残りの半数には偽薬が与えられた。
試験を開始した時点で、臨床的認知症尺度(CDR―SB)のスコアは両グループとも約3.2だった。このスコアが1年半後、偽薬のグループで1.66ポイント上昇したのに対し、レカネマブを投与したグループは1.21ポイントの上昇にとどまった。
研究チームのメンバーが29日、米サンフランシスコでの学会で報告したところによると、グループ間の差は半年後の時点から目立っていた。
レカネマブは、アルツハイマー病患者の脳内に蓄積されるたんぱく質「アミロイド・ベータ」と結合し、これを取り除くことによって効果を発揮する。
試験開始時に患者の脳内にたまっていたアミロイド・ベータの量の平均は、レカネマブ組が77.92センチロイド、プラセボ組が75.03センチロイドだった。
これに対して1年半後の平均は、レカネマブ組が55.48センチロイドも減少したのに対し、プラセボ組は3.64センチロイド増えていた。
期間中の有害事象で試験を中止した参加者の割合は、レカネマブ組が6.9%、プラセボ組が2.9%だった。
全体としてはレカネマブ組の14%、プラセボ組の11.3%で重大な有害事象が報告された。レカネマブ組で多かったのは点滴への反応と、脳浮腫や微小出血などのアミロイド関連画像異常(ARIA)。いずれも数カ月で回復した。
ARIAのうち、出血はレカネマブ組の17.3%に対してプラセボ組の12.6%、脳浮腫はレカネマブ組の12.6%に対してプラセボ組の1.7%にみられた。
ARIAは、アポリポたんぱく質(APO)E4という遺伝子を持つ患者で多く発生していた。APOE4はアルツハイマー病をはじめとする認知症自体の危険因子でもある。
死亡した参加者はレカネマブ組で6人、プラセボ組で7人。参加者全体に占める割合はそれぞれ0.7%、0.8%で、レカネマブの投与やARIAとは無関係と考えられる。
研究チームは、初期のアルツハイマー病に対するレカネマブの有効性と安全性を検証するために、より長期にわたる試験が必要だと結論付けている。
米食品医薬品局(FDA)には来年3月までに承認申請することを目指す。
エーザイによると、FDAは今年7月、迅速承認制度に基づくレカネマブのライセンス申請を受理した。迅速承認を認めるかどうかの判断は来年1月6日までに下される見通し。今後の検証試験で臨床的に有益だと確認されれば本承認となるが、そうでない場合は回収の指示が出る可能性もある。