タウリンに寿命を延ばす効果? ただしミミズとマウス、サルに限る
(CNN) ボディービルダーが愛用し、エネルギー飲料やスポーツ飲料にも含まれるアミノ酸のタウリン。この物質に寿命を延ばす効果があるかもしれないという研究結果が8日、科学誌サイエンスに発表された。
ただしこれはミミズやマウス、サルを使った実験の結果であり、人にも同じ効果が期待できるのか、それとも害になるのかは分かっていない。
論文は米コロンビア大学とドイツ・ミュンヘン工科大学の研究チームが発表した。中年のメスのマウスにタウリンのサプリメントを与えたところ、タウリンを与えなかったマウスに比べて平均で12%長生きしたとしている。
「この研究は、タウリンが私たちの中で不老不死の薬になり得ることを示唆している」とコロンビア大学のビジャイ・ヤダフ助教は解説する。
非必須アミノ酸とされるタウリンは、脳や網膜、体内のほぼ全筋肉や臓器の組織に存在する。これまでの研究の結果、高齢者の脳には抗炎症作用や神経保護作用がみとめられた一方で、思春期の脳には有害となる可能性が指摘されている。
タウリンの値は年齢と共に減少するが、「これを若い頃のレベルに戻すと、マウスが健康で長生きする効果がある」とミュンヘン工科大学のヘニング・バッカーハーゲ教授は話す。
サルを使った実験では、タウリンのサプリメントを摂取したサルの方が体が引き締まり、血糖値が良好で、肝臓の損傷が少なく、骨密度が高く、免疫系が若く見え、体重の増加が少ないことが判明。「タウリンの量が年齢と共に減少する現象を逆転させれば、この動物を健康で長生きさせられることが分かった」(ヤダフ氏)
ただし、人間に対するタウリンのアンチエイジング効果があるかどうかが実証されるまでには、まだ何年もかかる見通しだ。
「もしタウリンの摂取量を増やすために動物由来食品の摂取量を増やせば、害になる可能性もある」。栄養学に詳しい米ハーバード大学のウォルター・ウィレット教授はそう釘をさす。同教授は今回の研究にはかかわっていない。
13万人超の男女(3万人以上は死亡)を対象に最長で30年間追跡調査した結果では、動物由来たんぱく質の摂取量増加と、全般的な死亡率増加や主要疾患による死亡率の増加との関係がみられたとウィレット氏は指摘。人のタウリンのサプリメント使用に関する研究は興味深いものの、使用を推奨するには程遠い状況だとの見解を示した。
この研究で人について唯一行った実験では、運動によってタウリンの値が向上することが証明された。
タウリンなどのサプリメントについてはヤダフ氏も、「市販品の購入は勧めない」「人の臨床試験が完了するまで待つ必要がある」と強調している。