南極の「ドゥームズデー氷河」、急速な融解は1940年代から 新研究
(CNN) 崩壊の危険が高いことや世界的な海面上昇を引き起こす脅威などから「ドゥームズデー(最後の審判の日、この世の終わりの日)氷河」の異名をとる南極大陸のスウェイツ氷河について、1940年代から急速な後退が始まっていたことが新たな研究で分かった。今後の融解を洞察する上で憂慮すべき発見となっている。
南極西部に位置するスウェイツ氷河は世界最大の氷河で、おおよその面積は米国のフロリダ州に匹敵する。これまで科学者らの認識では、70年代から氷の喪失ペースが加速したとみられていた。ただこれは衛星による観測データが数十年前のものしか入手できないためで、実際の大規模な融解が始まった正確な時期は分かっていなかった。
26日刊行の米国科学アカデミー紀要に掲載された論文によると、現在はこの問題にも答えが出ている。
海底の下にある海洋堆積(たいせき)物コアを分析したところ、研究者らは氷河が40年代に著しく後退し始めたことを突き止めた。これは極めて強力なエルニーニョ現象に起因する公算が大きいという。太平洋の赤道沿いで発生する気象現象エルニーニョは、気温の上昇をもたらす傾向がある。
その後スウェイツ氷河が回復しなかったのは、人間由来の地球温暖化の影響を反映した可能性があると、研究報告は述べている。
パインアイランド氷河から分離した氷山=2017年/Joshua Stevens/NASA Earth Observatory/US Geological Survey
スウェイツ氷河に起こることは将来地球規模で波及する。これまでの海面上昇の4%はこの氷河に起因し、氷河からは年間数十億トンの氷が海に流れ出ている。氷河が完全に崩壊すれば、海面は60センチ以上上昇する恐れがある。
スウェイツ氷河の崩壊で、南極西部の氷床の安定も失われるとみられる。この氷床は海面を少なくとも3メートル押し上げるだけの水を含んでおり、これが融解すれば世界規模での壊滅的な洪水を引き起こしかねない。
今回の研究結果は、近くに位置するパインアイランド氷河についての以前の研究とも整合する。同氷河は南極最大の氷河流の一つで、やはり40年代から急速に後退し始めたことが分かっている。