現在もまだ「２０１６年」の国とは？

（ＣＮＮ） エチオピアは９月１１日に１年の終わりと次の年の始まりを祝う。

ただしエチオピアの暦によれば、次の９月に迎える新年は「２０１７年」だ。

アフリカで２番目に人口の多い国であるエチオピアが、世界の他の多くの国より７年８カ月「遅れている」のはなぜだろう。

その答えは、何世紀も前から続く伝統と、確固とした国民的アイデンティティーにある。

独自の暦

新年を祝って歌う人たち＝２０２２年９月１１日/Tiksa Negeri/Reuters

エチオピアではイエス・キリストの誕生年を、１５８２年にローマ教皇グレゴリウス１３世によって導入されたグレゴリオ暦つまり「西暦」より７～８年遅いと認識している。

専門家によると、ローマ教会は西暦５００年に計算を調整したが、エチオピア正教会は古来の日付を採用した。

世界の他の多くの国がグレゴリオ暦を採用するようになったが、エチオピアは独自の暦を維持している。

エチオピアの旅行会社の最高経営責任者（ＣＥＯ）は「私たちには独自性がある」と話す。「私たちは植民地化されたことがなく、独自の暦、アルファベット、文化的伝統を持っている」

少なくとも１５００年前にさかのぼると考えられているエチオピア暦は、エジプトに拠点を置くコプト正教会のコプト暦と多くの類似点がある。

太陽と月の周期に従い、１年を１３カ月とし、そのうち１２カ月は各月とも３０日間続く。最後の１カ月はわずか５日間で、うるう年は６日間となる。

エチオピアを訪れる旅行者は、自分たちが「時間をさかのぼった」ことを知って動揺し、ＳＮＳ上でその驚きを共有している人もよく見かける。

同国に拠点を置く国際企業や学校はグレゴリオ暦を採用する傾向にあるため、多くのエチオピア人は伝統的なエチオピア暦と西暦の両方を使用せざるを得ない。

出生証明書を申請するといった単純なことでも、エチオピア暦と西暦を統合しようとすると問題が起きることがある。

日付の混乱

中世欧州とアフリカの歴史を専門とする歴史家は、子どもが３歳になり、市や地方自治体に出生証明書を申請するとなったら、エチオピア暦に従って申告したうえで、担当者がきちんと換算してくれると信じなければならないと話す。

なぜなら特定の変数のせいで誕生日が２倍、３倍になることがあるからだ。

１２時間制

エチオピアは午前１時から始まる１２時間制を採用している/Minasse Wondimu Hailu/Anadolu Agency/Getty Images

ほとんどの国では１日が真夜中に始まるのに対し、エチオピアは午前１時から始まる１２時間制を採用している。

つまり、国外のほとんどの人が午前７時と考える時間を、エチオピアでは午前１時とみなしている。

エチオピア人の写真家は、これはエチオピアの生活を反映したものだと説明する。エチオピアは赤道に近いため、日照時間がかなり一定であることから、この考え方はより合理的に感じられる。

当然ながら、これはとりわけエチオピアを訪れる旅行者にとって混乱を招く可能性がある。

この写真家は外国からの訪問者と約束をするとき、必ずエチオピア時間なのか西洋時間なのかを明確にするそうで、「誰かが午後２時に会おうと言ったら、（午前か午後か）をもう一度確認する」と話す。

「飛行機のチケットを買うときは航空会社が西暦を使用しているので、エチオピア時間で理解するために３、４回確認している」