小惑星ベンヌの試料から有機物、「生命の構成要素は地球外に起源」と研究者
(CNN) 地球近傍小惑星「ベンヌ」から回収された試料を調査していた研究チームが、生命に必要な有機化合物や鉱物を発見した。地球の歴史の初期に小惑星から生命の構成要素が届けられたとの説を裏付ける新たな証拠となる。
これらの試料はまた、宇宙の岩石が盛んに飛び交っていた太陽系初期にどのような化学的、生物学的プロセスが進行していたのかを理解する手がかりを提供するものでもある。
過去1年の間に発表された岩や塵(ちり)を調べた初期分析では、ベンヌが水だけなく、炭素や窒素などの有機物も含有することが示されていた。ただ、こうした有機物の化学組成に関してはほとんど分かっていなかった。
今回、新たな研究により、アミノ酸やDNAの材料など生命の化学的構成要素の多くがベンヌに含まれていることが判明した――。そう指摘するのは、米航空宇宙局(NASA)のゴダード宇宙飛行センターでサンプルリターン(試料回収)の研究に従事するダニエル・グラビン氏だ。
グラビン氏は「どれも非常に刺激的な発見だ。ベンヌのような小惑星がかつて宇宙で巨大な化学工場のような役割を果たし、地球や太陽系の他の天体に生命の材料を届けた可能性が示唆されているからだ」と説明する。グラビン氏は英科学誌ネイチャー・アストロノミーに29日発表された論文の筆頭著者を務めた。
このほか、英科学誌ネイチャーに同日発表された別の論文の著者らは、ベンヌの岩石から生命に不可欠な塩や鉱物を発見した。この中には、小惑星の試料から一度も見つかったことがない物質も含まれていたという。
NASA科学ミッション局の幹部、ニッキー・フォックス氏は、両論文の成果を「画期的な科学的発見」と位置づける。研究結果はNASAの29日の会見で共有された。
オシリス・レックス(オサイリス・レックス)の試料からは1マイクロメートル未満の磁鉄鉱の結晶が検出された/Rob Wardell/Tim Gooding/Tim McCoy/Smithsonian
ベンヌは炭素を豊富に含む宇宙の岩石で、「ラブルパイル天体(破砕集積体)」と呼ばれる。科学者の見方では、ベンヌはかつてより大型の母天体の一部だったが、この母天体は何らかの衝撃で一部が欠けた。その後、吹き飛ばされた破片が集積し、重力によって瓦礫(がれき)が緩やかにつなぎ合わされているような状態になった。
試料は2020年10月、NASAの探査機オシリス・レックス(オサイリス・レックス)が収集した。米国が小惑星に宇宙探査機を送り込んで一時着陸させ、物質を収集するのは初めてだった。オシリス・レックスは23年9月、地球近傍を通過した際にカプセルを投下。カプセルはパラシュートでユタ砂漠に着陸した。