東京五輪 新型コロナ懸念でボランティア辞退も
ハタケヤマさんは「五輪は人命を軽んじている。われわれの生活は通常ではなく、今は緊急事態だ。なぜ、今、東京五輪を開催できるのか」「五輪の意味が完全に忘れ去られたと思う」と述べた。
しかし、もっと楽観的なボランティアもいる。トラベルライターで写真家のフィルバート・オノさんは「すべての可能な安全措置が実施されると信じている。わたしはすべての手続きに従う。だから、危険性はとても小さくなると確信している」と述べた。
大会組織委員会は、五輪は安全な「バブル方式」で実施できるとしている。また、選手は定期的に検査を行い、接触を追跡し、社会的距離を確保する。五輪開始までには選手の80%超がワクチン接種を行っているとみている。
しかし公衆衛生の専門家は、バブル方式には多くの抜け穴があると指摘する。特に、大半がワクチン未接種で検査もしていない数万人のボランティアが五輪会場を行き来した場合を問題視している。
豪バーネット研究所の伝染病学者マイク・トゥール氏は「たとえ観客がいなくても、バブルではない。あまりに多くの漏れがある」と指摘。7万人のボランティアが地元から近隣を移動して五輪会場に入るが、そのうちの約20%がワクチン未接種なら、危険性の高いシナリオもあり得るとの見方を示す。
医療従事者からの警告の声は増え続けている。東京都の約6000人の医師を代表する東京保険医協会は公開書簡で東京五輪の中止を呼び掛けた。
政府の対策分科会の尾身茂会長は、パンデミックのところで五輪をやるのは「普通ではない」との見方を示した。
五輪が近づくなか、ワクチン接種の計画も進んでいる。
しかし、1日あたり100万回の接種を行う能力があっても、人々にワクチン接種を促す困難が待ち受けている。
日本では4月、65歳以上の高齢者を対象としたワクチン接種が始まった。しかし、これまでにワクチン接種を行った高齢者の割合は3分の1にとどまる。河野行政改革相は一部でワクチン接種にためらいがみられることを認めている。
東京と大阪に設けられた大規模接種センターでは17日から65歳未満の人も対象に接種を始める。
菅義偉首相は、新型コロナウイルスのワクチンについて10月から11月にかけて、希望者全員が接種できるようにしたいとの考えを明らかにした。
エズナシャーリさんは大会中は東京での友人宅に滞在することを計画していた。新型コロナウイルスの流行前は友人らは前向きだったが、今では、「1日何千人もの人たちと交流する可能性のある人と暮らしたいのか」と考えているようだという。
ドイツ日本研究所の副所長を務めるバーバラ・ホルトスさんもボランティアの辞退を考えている。自分自身や家族を守る必要があると語るホルトスさんは「スポーツイベントを開催するには全く適していない時期だ。世界が傷ついているときに、完全に間違ったメッセージだ」と述べた。