米歌手ハリー・ベラフォンテさん死去 社会活動に貢献、反権力の姿勢貫く
富や名声が増しても痛烈な姿勢は揺るがなかった。米国のイラク侵攻を理由に当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領を「世界で最も偉大なテロリスト」と呼んで批判の的になり、ジェイ・Zやビヨンセなどの黒人セレブが社会正義のために立ち上がらないという理由で非難した。
オバマ元大統領が2008年に初めて大統領選に出馬した時には、オバマ氏から「いつになったら私に手加減してくれるのか」と尋ねられ、「これまでもそうしてきたつもりだけど」と言い返した。
ベラフォンテさんは1927年3月1日、ニューヨーク市で貧しいカリブ系移民の家庭に生まれた。父はベラフォンテさんが幼い頃に家族を捨て、ベラフォンテさんは母の出身国のジャマイカで少年時代を過ごしたこともある。かつて英国の植民地だったジャマイカでは、白人の植民地政府のジャマイカ人に対する不当な扱いを目の当たりにした。40年までにはニューヨークに戻ってハーレム地区で母親と暮らし、母親は貧困に苦しみながら一家を支えた。
ハイスクールを中退したベラフォンテさんは44年、米海軍に入隊。エンターテインメント業界に足を踏み入れたのは、ほとんど偶然だった。ニューヨークで清掃員の仕事をしていた時に、アメリカン・ニグロ・シアターの演劇を見て感銘を受け、俳優になろうと決意する。
演技を学ぶ傍ら、ナイトクラブで歌手としても活動するようになり、49年にレコーディング契約を獲得した。
生まれながらのカリスマ性は、舞台上でもマイクの前でも発揮された。ブロードウェイの演技が評価されてトニー賞を受賞したのに続き、59年のバラエティー番組でアフリカ系米国人として初のエミー賞を受賞した。