中国アニメ映画「ナタ2」大ヒット、国内興行記録を塗り替え 欧米市場へ進出
「この映画が伝えるメッセージはさまざまな観客の共感を呼び、既成の構造、制度、権威への挑戦、家族愛と友情のテーマ、制度や権威への不信、アイデンティティーの混乱など、現代が抱える多くの課題を反映している」と英ニューカッスル大学の映画・中国学研究を行うサブリナ・チオン・ユー教授は指摘した。
自由な解釈も呼び起こした。ナショナリストの観客の中には、米国を嘲笑する政治的メタファーと解釈されるドル記号や米国の国璽(こくじ)、国防総省、コロナウイルスに似たオブジェなどを見つけて興奮する者もいる。
最近の中国の大ヒット作の多くは、ナショナリズム感情の高まりに乗じて大成功を収めている。21年に中国政府からの依頼を受けて制作された戦争映画「1950 鋼の第7中隊」は、17年公開のアクション映画「戦狼2」から興行収入トップの座を奪った。
国家の誇り
興行収入の記録を塗り替えたナタ2は、中国のアニメ・映画産業の勝利として瞬く間に脚光を浴びた。
完全に中国国内で制作され、138のアニメーション会社と4000人以上のスタッフが作品に携わった。
楊宇監督は、中国国営中央テレビ(CCTV)に対し、当初はいくつかの重要なシーンを国際的な制作チームに依頼したものの、結果は期待を下回るものだったと述べている。
外注したショットの多くは思い通りに仕上がらず、結局は自分たちで制作することになったという。
楊氏によれば、技術と産業プロセスの面において、中国の制作会社と外国のトップ企業との差は縮まりつつあるという。
中国のアニメ業界は長い道のりを歩んできた。ハリウッドのディズニーやピクサー、日本のスタジオジブリの映画を見て育った世代の観客が多い中国市場では、近年、特に伝統文化を擁護する国産のアニメ作品が増えている。
ナタ2の興行収入がハリウッドの名作を次々と上回る中、中国のソーシャルメディアでは、ユーザー同士が映画館に足を運ぼうと呼びかけた。中国のSNS「微博(ウェイボー)」のトレンド・ハッシュタグは、ナタ2の世界興行収入ランキングでの上昇を「国旗の掲揚」に例えた。
13日夜、ナタ2の興行収入は100億元(約2100億円)を突破し、「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」を抜いて、「アナと雪の女王2」に次ぐアニメ映画史上3番目の興行収入を記録した。
国営メディアと中国当局は同作品を称賛し、中国の「文化的自信」の高まりを示す好例だと評価した。
だがナタ2は、新作映画「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」と競合することになる海外市場で不動の地位を築くという大きな課題に直面している。専門家らは中国系移民の枠を超えて、より幅広い海外の観客とつながるのに苦労するかもしれないと指摘している。