言語の絶滅、救えるか 語学アプリで探る保存の道
そこで、デュオリンゴは2013年10月に、誰でも言語学習コースの作成を始められる新プログラムを立ち上げた。しかし、その時でさえ、コースを作成するインキュベーターは当初、少数言語ではなく新たな主要言語(ロシア語が初期の候補だった)を追加するための手段と考えられていた。
しかし、ヒッグス氏の心からの嘆願にデュオリンゴの創業者は心を打たれ、ついにアイルランド語はデュオリンゴに追加された初の絶滅危惧・少数言語となった。
その後、アイルランド語コースの受講者は増加し、デュオリンゴのデータのよると、2016年までに受講者数は数百万人に達し、アイルランドの総人口を上回った。現在、同コースの週間アクティブユーザー数は94万人を超えている。
ダブリンシティ大学のラーニングテクノロジストで、デュオリンゴのアイルランド語コースの作成者の1人でもあるオイシン・オードイン氏によると、学校で語学を学んでいる生徒らが、補助教材として同アプリを使い始めており、アイルランド語コースは、特に米国でアイリッシュディアスポラ(アイルランド島外に移住したアイルランド人)たちが利用しているおかげで大成功しているという。
絶滅危惧言語への新たなアプローチ
これまでデジタル革命は、多くの絶滅危惧言語に「とどめを刺す」恐れがあると考えられてきた。ハンガリー人の言語学者アンドラーシュ・コルナイ氏によると、デジタル界の言語の消滅は、ある言語がデジタルの世界から「はじき出された」時、すなわち、その言語がスマートフォンなど、日常のデジタル生活の中で使用できない時に起こるという。
デュオリンゴでウェールズ語コースの作成に携わる語学教師のジョナサン・ペリー氏は、「ウェールズ語のような少数言語でも、コミュニケーションの手段として利用でき、かつ現代の電子機器上で使用可能であると人々が認識することが非常に重要」と指摘する。