カーン氏は近年、アマゾン、マイクロソフト、メタに対する訴訟の陣頭指揮を執ってきた。同氏は昨年、CNNとのインタビューでこれらの取り組みについて、米国の一般人の日常的な経済問題に政府の資源をより多く投入できるようにするための広範な活動の一部だと語った。
しかし政府の規制は、それが善意に基づくものであっても、現状すでに富を築いている人々に受け入れられることはほとんどない。
複数の報道機関によると、シリコンバレーで最も有名なベンチャーキャピタリストであるマーク・アンドリーセン氏とベン・ホロウィッツ氏の2人も米国PACへの献金を約束している。
両氏はバイデン政権に対する不満を隠すこともない。
両氏は最近、ブログに「米国政府は以前よりも新興企業にはるかに敵対的になっている」と投稿。規制当局が「強引な調査、起訴、脅迫、新規産業を妨害するための脅し」を行っていると批判している。バイデン政権が提案した未実現のキャピタルゲインに対する課税については新興企業とベンチャーキャピタル業界を「完全に殺す」と悲嘆の声を上げた。
大物たちの動きに詳しいある人物が英紙フィナンシャル・タイムズに語ったところによると、有力者らがトランプ氏に乗り換えたのは「仮想通貨業界が大きな危機にひんしている」ことと人工知能(AI)の成長のためだ。「(トランプ氏の)移民に対する見解を支持するという意味ではない」
トランプ氏はこれまでテクノロジー業界にあまり好意を示しておらず、SNS企業は反保守的な偏向があると長きにわたり非難してきた。21年1月6日の国会議事堂襲撃をめぐり、数社がトランプ氏のアカウントを停止してからはその姿勢を強めていた。しかしベンチャーキャピタリストだった39歳のバンス氏のおかげもあり、テクノロジー業界から最近になって資金が流入したことを受け、トランプ氏の過激な見解には軟化がみられる。
トランプ氏は21年、ビットコインを「ドルに対する詐欺」と攻撃していたが、最近は自身を仮想通貨に好意的な候補者として位置付けている。トランプ陣営はデジタル資産に関する具体的な政策案は提起していないものの、今春から仮想通貨による寄付を受け付け始めた。来週にはビットコインの年次会議で講演する予定だ。
一方、バイデン政権は、米証券取引委員会(SEC)やゲンスラー氏によって窮地に立たされていると訴える業界トップらとの関係修復に取り組んでいる。ゲンスラー氏は仮想通貨コミュニティーの天敵と広く受け止められている。
実際、バイデン氏やその他の民主党候補には今もテクノロジー業界から巨額の献金が続いている。その中にはリンクトインの創業者リード・ホフマン氏やグーグルの共同創業者エリック・シュミット氏も含まれる。一方で、トランプ氏がシリコンバレーからの支持を獲得したのは、バイデン氏の出馬をめぐる議論が続く中、民主党の主要献金者の一部が献金を一時停止した直後だった。
そしてコバセビッチ氏が指摘するように、数人の大物がトランプ氏支持に切り替えたからといって「彼らが全員を代弁しているわけではない」。
「実際、大企業のCEOのほとんどは党派政治にそれほど関与していない」「彼らは選挙で誰が勝とうとも、協力する必要があるだろう」(コバセビッチ氏)
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本稿はCNNのアリソン・モロー記者による分析記事です。