ニカラグア湖、大運河建設の前に見る景色
湖の水深は浅く、運河建設の際に湖底の土砂を除去する浚渫(しゅんせつ)が必要になる。ニカラグア科学アカデミー幹部で、中米大学・分子生物学センター長のホルヘ・A・フエテ・ペレス博士は「運河建設に伴う浚渫により、ニカラグア湖の水は濁り、低酸素症や富栄養化が発生し、『死の湖』と化してしまうだろう」と危機感を募らせる。
フエテ・ペレス氏はまた、「船の往来により、有毒な堆積(たいせき)物や化学物質で水が汚染されたり、破壊をもたらす侵入種の動植物が入ってきてしまう」と懸念を示す。
湿地帯もこれまで以上に破壊のリスクにさらされる可能性がある。2019年に完成するまで、運河がニカラグア湖に与える影響の全容は分からない。
一方、HKNDは今年1月、昨年7月にニカラグア各地で公開会議を開催し、主婦、学生、専門家、農家、漁師、職人、実業家、学者など約5000人が参加したことを明らかにした。また記者会見で新運河のルートや、運河建設プロジェクトの技術的、地質学的、文化的、環境的影響について説明し、その模様がリアルタイムで放送されたとしている。
しかし、この野心的な運河の実現性を疑問視する声もある。米ライス大学土木工学部長のペドロ・アルバレス氏は、運河が完成にこぎ着けるか疑問を呈する。最大の懸念はニカラグア湖への深刻な被害だという。
こうした懸念の声が上がる中、プロジェクトは今も着々と進行している。美しいこの地域を見られるうちに、この地を訪問した方がいいかもしれない。