ストーンヘンジ近辺でトンネル道建設、先史時代の遺物の破壊懸念 専門家
(CNN) 英イングランド南部ウィルトシャーにある古代の巨石遺跡「ストーンヘンジ」の近辺でトンネル道を建設する工事が進んでいることに関して、現存する先史時代の遺物が破壊される恐れがあるとの懸念の声が考古学者らから上がっている。
すでにストーンヘンジの近くにある6000年前の遺跡では、ドリルによる掘削で先史時代につくられた白亜の台に大穴が開いたとみられている。この遺跡は2005年以降発掘が進んでおり、当該の台には儀式用と思われる動物のひづめの跡が残されていた。
ひづめは現在絶滅した「オーロックス」と呼ばれる巨大な牛のもの。バーミンガム大学のデービッド・ジェイクス教授によれば、普通の牛の2倍に相当するサイズのオーロックスからは1頭当たり300人分の食肉を得ることができた。このため人々の崇敬の対象となっていたという。
遺跡にひづめの跡が残されていたという絶滅した巨大牛「オーロックス」/ Credit: wiki commons
遺跡からはフリント石器や絶滅動物の骨などが大量に出土しており、ストーンヘンジがつくられた時代の人々の生活をうかがい知るうえでの貴重な証拠となっている。今後さらにトンネルの掘削が行われれば、地下水の水位が下がることなどによりこれらの遺物が損壊を被るのは避けられないとジェイクス教授は指摘。「遺物が守られなければ、なぜストーンヘンジがつくられたのかを理解することもできなくなるのではないか」と警鐘を鳴らす。
これに対し、約3キロのトンネル部分を含む道路の建設を手掛けるハイウェイズ・イングランドの広報担当者はCNNの取材に答え、準備段階の掘削によって遺物が破壊されたとの見方を否定。工事はジェイクス教授と情報共有しながら特定の指針に沿って進めており、遺跡に甚大な影響を及ぼすことはないと強調した。